第11話 死の宣告

なんか周りの人間がめたくそビビってるwww

めっさきもちええwwwwwww


・・・ただ、なんか白い鳥の羽っぽいのがヒラヒラとやたら落ちてくるのがめたくそ気になる。


ハトか?鳥インフルとかこいつ等絶対知らないだろ・・・しっかり掃除しろよ!


フンが気になってやたら上を確認したい・・・けど我慢よ。


「ただ一人として残さぬ。残る日々を恐怖と後悔に震え数えゆくがよい」


言い切ったー!

ここでフッ、と気を失ったフリで倒れ・・・


「待たれよ!」


めたくそデカい声と共に、突然目の前にデカい男が土下座・・・つか膝を着いた。

壇上の御簾が揺れている。

あ、あそこから飛んで出てきたのか・・・じゃあ男爵様?


「畏れ多くも天上の儀、伏して受け賜りました」


・・・えー!言いきり文句て二度言ったら間抜けじゃん!

どーすんのよこの後・・・


「マグラレーテが寄子、騎士ハインよ。そなたへ私をいざなったそちの娘フランシーヌとゼンダウォルフ、両名の功・・・永代の誉とせよ」


ラシィちゃんのフルネームか・・・フランス人だった?


「御意に。お言葉、末代へまで伝えられましょう」


つーかこのおっさんの名前とかなんで知って・・・いや、なんかココの奴ら全員の名前がわかる。


「うむ」


「しかし、もはや我ら暗愚なる者共に未来は無いのでしょうか」


密かに後ろに立っているであろう白いキミの名前を検索・・・ヴァーミリオン・ミハイル様だって!天使(前世)じゃんやったね!


「そうよな・・・」


あたしは周囲を見渡す。

誰も彼もが打ち震えながらも悉く跪礼を取っている。


「我が主は天使であらせられるが故、なんの取引もせぬ。・・・が、女神エルテは世界を愛す御方。信仰により救いは齎されるであろう」


信仰→お布施→儲かる。


信仰とお金は方程の等式という四次元の力で固く約束されているのである。


わかってるな?と視線を下ろすと、騎士ハイン(男爵らしい)は恐々と首肯したのだった。


「全ては御心のままに」


「この後に女を残す。只人のブレイバーとして遇するがよい・・・くれぐれも我が現身として扱う事なき様心せよ」


え?あたしそんなこと考えて無い!城の中で金の風呂に漬かりながら一生安楽に暮らすのよおおおおおお!!!!!!!


しかし慎まやかなる願いは儚く暗転の彼方へと消えてしまったのであった・・・ガクリ。







ざらりとしたリネンの寝具の上目覚めたあたしは、つるてんとした自分のゆきそびれた裸を矯めつ眇めつ、前後の穴までとくに事後の跡が無いことを確認してベッドから足を下ろした。


「広い部屋・・・」


洋間、壁も木や石丸出しではなく壁紙か漆喰かわからんけどうすい緑で纏められた色と意匠が施されている。


床には毛皮でなく、毛足の長い絨毯が敷かれ、足元には一足のスリッパが整えられていた。


・・・ブレイバーってのでもここまで丁重に扱われんのか。

だったらブレイブ野郎でもいーかこの際。


頬から乳・・・ないねんけど・・・に垂れる巻き毛をくるくるしながらスリッパを履き、畳まれた草色のワンピ他装具が置かれたテーブルへ向かう。


ん?髪の毛が茶色になっとる・・・顔戻ったのかな?

カガミは・・・なんじゃこの鉄の盾は。

磨かれた金属板、て感じの板を覗き込むと、ビミョーにいろいろ歪んだ自分の顔が映った。


んー・・・子供のままおっきくなったハー〇イオニーちゃんてトコだな。よし!



などと一人頷きながら衣装を着装しているとキラキラとした音・・・呼び鈴か?が鳴り、しとやかに落ち着いたダンディな声で食事をお持ちしました、ときた。


「入って」


入室を促すと、何人もが料理を手に入ってくる。


何も持ってない男が部屋の窓際にあるクロスの敷かれた丸テーブルの椅子を引き、控えた。


座ると、鶏卵、サラダなどが供され、食べすすむうちに次々と皿が置かれては取り去られていった。


「もういいわ」


あー満腹!

あ、まんぷくとか言わんのよね昨今・・・まあいいか。


椅子を立つ。


おそらくはあたしよか全然身分が高いであろう給仕の礼を受けながら、このまま再びベッドへとダイヴしたくなる欲求を我慢して部屋を出る。


「ナイコ様、おまちあれ」


廊下に出て右か左か、と迷うあたしを給仕が追っかけてきた。


「ハイン様がお待ちです。ご案内いたします」


「ええ?!」


こちらへ、と先導に立つイケ男の背をなんとなしに追う。


「あのー、あんたも貴族様なんでしょ?なんかごめんね」


男は特に不快も無いように返す。


「いえ、わたくしは家宰ですので身分はありません」


「ええ!若く見えるのに・・・すごいねえ」


うーん、あたしのおばさん的な口調が悲しい・・・


「ブレイバーは身分に拘泥されぬ方々が多くおられます。出来ますれば、我が主を軽んじられること無きようにお願い申し上げます」


「うん、肝に銘じます。安心して」


ハイン氏、いい貴族やってんのかなぁ。

大変だろうに・・・いや、なんかめたくそ強そうだったし、只自由気ままに生きているだけで世の中がバラ色になっていく人種なのかもしれんよ。


家宰の人()が大扉の前に立ち止まり、呼び鈴を引いた。

太い声の応答に「お連れしました」と言う。


え?別室でまってろ・・・じゃないの?!?!


やばい、心の準備が・・・


ドアを開き、顔を伏せて控える家宰の人。

その向こう、椅子を立った偉丈夫のヒゲが窓の光を遮ってあたしを招く。


「よう来られた」


入室するとあたしはゆっくりと両膝を厚い絨毯に付き、ヒザ前へと錐衡に揃えた両手に顔を伏せる。


土下座。


「漂舶のブレイバー、乃子・苧伴。お召しにより参上仕りましてございます」


「な、なにをなさる!・・・さ、立たれよ」


なんと駆け寄り手を取り上げられながら起こされてしまった。


「え?だいじょぶなんですか?」


「ああ、身分は絶対であるが、それはこの世の理です。あなた方ブレイバーは身分を制限されておらぬのですよ」


「ああ、それで・・・」


「ベイツよ、気を楽に・・・と伝えよと申したであろう」


「は。申し訳ございませぬ」


手を引かれ、勧められるがままに着席する。

懐かしの入社面接程度に浅く腰かけて。


・・・あれ?浅く座るのはダメなんだっけ?



とにかくも男爵様との面接が始まったのであった。

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