第10話 領都にて

私は偉い人達が立ち並ぶTHE・謁見の間といった風勢の城内にてヒザをつき首を垂れている。


御簾の向こうの、おそらくは成人男性に。



馬車が帰城するなり善田さんゼンダウォルフにいそいそと腕を掴まれ、あれよあれよと納屋の奥(場所!)へと連れ込まれたあたしはそこで処女を喰い散らされた。


サイズが違いすぎて膜がどうとかいうレベルの激痛ではなく、何度も拒絶や哀願の叫びと共に気を失ったのだが、どうもそれが善田さんゼンダウォルフの獣欲やら邪悪な嗜好を刺激してしまったのか、その度に殴打や更に局部を裂かれる痛みなど熾烈なる激痛で意識を戻され、かれこれ三時間くらいめたくそに蹂躙されてしまった・・・



マジ死ぬかと、つか何度も死んだと思った。


日が落ちて暗くなった闇の中、どうにか意識を取り戻したあたしは柔肌に刺さる藁の上に身を起こし、破瓜の仕儀とはいえ閉じなすぎる脚を不審に思い視線を下ろすと、尻に剣柄が挿さっていた。


なんてもん入れるんじゃあの男は!


ナスやニンジンを入れようとしてた前世の男どもが軽く霞んでしまった。


よく大静脈破裂で死ななかったと呆れる間もなく、このブツを抜かなくてはならないという試練に直面したことに気づく。


入れられた直後とは違い、今は軟体化からは回復して肉のシマリも戻っているのだ。

・・・出産どころかはるか手前でもう絶対絶命やんなんなんコレえ?!


襲い来る強烈な便意に踏ん張ってみると、鞘は一ミリも動かず噴水のような出血が起こった。


冷寒な夜気の中、月明りに立ち上る血の湯煙に卒倒し、強烈な悪寒と寒さに再び目覚めたとき、漸く癒しの魔法を使うことを思い立ち、死の淵からの生還を果たしたのであった。


剣鞘は、痛みが消えると同時に抜け落ちた。


其処ら辺に投げ捨てられた衣類を回収、着装しながら、これは逃げなければ死んで・・・殺されてしまうのでは?という危機感に震えていると、「まだこんなところにいるのか」とフツーの平常運転で現れた善田さんゼンダウォルフに連れられ、旅塵を・・・というよりカレの体液他排泄物を厳重に洗浄され妙な匂いのアブラを塗りたくられ(主に髪)、それなりに清潔な古着を着せられて謁見という見本市に連れ出されたのだった。


連れ出される際、獣と化した昨夜のカレを思い起こしちらちらと恐怖の視線を善田さんゼンダウォルフに向けていたら、「俺にホレたのか?悪いが妻がいるんだ」と全くその気も無い内から鼻をかんだアトのちり紙のように捨てられてメンタルが即死し、ゾンビな魂の抜け殻と化して今あたしはここにいる。



「ナイコとやらに申す。そちは―――――」


御簾の前、二段ほど降りた場所にいるヒゲ男が領主様の言葉を代弁するみたい。


ああ、直答は―――――てヤツか。

前世でも役員?の人とかがどーしても出なきゃなんない会議とかでやってたな。

エレベーターで乗り合わせて挨拶したら「変だったでしょwww」とか笑ってて、別に社員と隔意があるてワケじゃないらしかったが・・・


「ブレイバーであるというが、まことか」


「えっと、はい。そう聞きました」


誼を通じろとかつってたし、いちブレイバーとしてアイデンティティを持たねばならぬよなぁ。


「閣下!騙されてはなりませぬ!」


高く澄んだ美声が轟いた。


あっ・・・


ソッ、と目だけで声を追うと、あの白のキミだった。


「その女は魔の者、悪しき背教者ですぞ!」


赤い眼があたしを射抜くように向けられる。

相変わらずの美しさに、頬が熱くなる・・・でも、今のあたしは膜を・・・両の羽根を毟られ、ズタズタに汚されてしまった瀕死の小鳥(大人気慣用自己抽象表現THE・小鳥)。


美しいあなたにはもう相応しくないの・・・と、いつのまにか沸いて出た涙と共に視線を落とす。



「その涙こそが邪知を看過された証しよ!閣下、どうかこの場にて神聖なる詮議を行うことを許されたい!」


めたくそウキウキした喜色を浮かべた声音が高らかに響く。

フォーマルな場だっつーのに女虐めたくてたまらんとか・・・ステキすぎる!!


再び髭爺が御簾と通信し、背筋を伸ばすと厳かにのたまう。


「ウォルフよ、そちが連れてきた者よな。かまわぬか?」


「は。御意のままに」


冷たい・・・って、まぁそー言うしかないよね。


目前に打ち下ろされた二本の鉄杖が忽ちの内に持ち上げられ、首を挟まれて吊るし上げられる。

げえっ、と声も出せず首が締め上げられ、浮いた二本の脚が宙を掻く。


力無く鉄杖を掴むあたしの両手がそのままに鉄杖へと固く縛り付けられる。


ヒドすぎる・・・異世界転生ヒドすぎやん!


顔を嗤い歪めながら歩み寄る白いキミの顔がせめてもの慰みよ・・・


「ククク、よい恰好ではないか。直にもキサマの醜悪なる正体、神に問いただしてくれよう」


あたしの顔の前にあのトゲトゲ金属棒をじっくりと見せつけ、背後へと消えてゆく。

剣鞘の刺さった痛みを思い出し震えながら、せめて前に入れてくれ・・・と儚い願いを送った(どこにだ。。。)。


「女神エルテよ、勇者を騙るこの毒婦の正体を顕かにしたまえ!」


瞬間、激しく背中を殴打された。


目玉が飛び出るかと・・・つか、ビルの百階から落ちたかっつーくらいの衝撃に、息が出来ず喘ぐ。


二発目の打撃に世界が激震し、キッツイ耳鳴りと共に意識が真っ白にトんだ。

これは、死んだ。


恐怖も痛みも苦しさも全てが消え、あたしの意識は―――――薙いだ湖面のようにひたすらに静謐におちついてしまった。


縛られた両手を鉄杖から削がし、首を持ち上げられたまま溜息をつく。

・・・なんかティッシュで縛られてたみたいに緩く剥がれたぞコレなんなん。


背後の金属音がガンガンとやかましいが、電マで撫でられてるみたいでなんか気持ちいい。


しかし御前(つーの?)でこのぶらーんと垂れた猫のような姿は不敬な気がするので、鉄杖から降りる。


封建領主は偉いのだ。

というより、偉くなくてはいけない。

ここであたしが無礼な態度を取り続ければ、それは配下の者達の忠誠を損ね、瞬く間に領内外へと広がり、心得を失った奴原目共が暴れまわり人が死にまくり人材、食料、資源は払底し・・・神への理解が遅れ消えゆく。


神への理解て・・・ああ、幾何数学か。


そこであたしは立ったままに口を開いた。


「聞け、信仰を歪め失いし暗愚なる者共よ」


カラオケでエコー掛け過ぎたみたいにめたくそに響くwww

腹式呼吸になってんのか、やたら通りの良い厳か率一万パーセント的な声になってるのも手伝って、なんかすごい系のこと言いたくなってしまった。


百日で死ぬワイとかSNSであったっけ・・・よし!



「主ら人間の守護天使として神に仕えるアイネルが使徒、ナイコが申し渡す」


アイネル?

ドイツ語の1と・・・ああ、某宗教の天使の命名規則の~エルを足したのかw

でも名前なんて聞いてな・・・と思ったあたりで背中に大きく大気を叩く感触が広がった。




「百日後に貴様ら人類は全て滅ぼす」





あ、おもわず対象を人類全てにしてしまった・・・

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