第4話 まほー
痛い!怖い!
人気のない寒空の昏い草原でとんでもない負傷。
目だよ目!!医者に連れてって!!!!!開放処置できる眼科がある病院へ!
そんなんねーよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
めたくそ不安で心細く泣きたく・・・
「いでえええ!!!!!」
涙が沁みてめたくそ痛い。
助けて!誰か!天使ちゃん!・・・て、そいやなんか治す魔法があんだよ!
なんだっけ、もっとよく聞いておけば・・・と焦燥、後悔に痺れる思考の隅に、知ってたwww当然wwwとばかりに魔法関係の知識が湧き上がる。
脳内に次々と開陳される魔法ツリーを口に出しながら順番になぞってゆく。
「女神エルテの聖なる御手にて、この身を苛む痛苦を払い賜え」
神聖魔法、女神の奇跡、癒し、と進んで
「あたしにキュアキュアー!」
キュア・・・何故に英語?!
唐突に沸き上がった疑問は、まるで淡雪のように溶けて消えた眼球の痛みとともに消えてしまった。
恐る恐る、ユビを右目に近づけて・・・触る。
マブタがパッと閉じるが、痛くない。
「痛くない!ヒャッハー!!!健康て素晴らしい!!!!!!!!!!!!!」
小躍りしてたら、めくれ上がったマントが吹き上がり、股の間を痛冷たい寒風が吹き去っていった。
「寒っ」
ぶるっ、とカラダを震わせて再びマントを掻き合わせ、フードを被る。
まあフードて首から上に余る様にマントを寄せて背中へ降ろしてるだけなんだけど。
つーかなんで転んだの?
足元を確かめる。
特に何も・・・草と、土。
「あ、平らじゃないんだ」
めたくそぼこぼこしている。
ええ・・・
こんどは転ばないように足元を確認しつつ進んでゆく。
ああ、なんか河川敷もこんな感じだったっけ。
若かりし頃、当(時の)彼と二人で歩いた荒川の土手を思い出す。
「たけし~あたし~あなたが大好き~♪」
デート中に適当に口ずさんだ歌を数十年ぶりに歌ってしまい、めたくそほのぼのしてしまった。
思い出に酔いつつ、多感だった少女時代のアレコレを反芻してしまう。
あ~寒空の下でもほんわか温かくなってきた・・・
男か。新しいの欲しいな~。
・・・いやいや、この世界の男てカネもクルマも持ってないだろ。
家やベッドすら怪しい気がする。
股を貸すだけ女のがソンじゃん・・・てかコンドームも、いや避妊て概念があるのかもわかんないよ!
女なんて其処ら辺でつまむ花の蜜みたいな野のお菓子や消耗品て見られてんのかもしれんし・・・
「あー・・・憂鬱になってきた」
もたくたとガニ股で土に開いた唐突な穴などを避けつつ、どんどん脚が重く・・・はならない。
全然疲れないよ、マジ若さ最高!
そう、若いのだ。
それだけで気分が上昇してゆく。
しかしそれほど経たぬうちに、気分はどん底に落ちてしまった。
「おなかすいた・・・」
相も変わらず地平の向こうを転がるだけの低く白いだけの太陽。
堕ちたときは暗い青と感じていた、いまは重く暗い灰色の空。
めたくそに寒く冷たい風。
そしてこの、枯れ枝もかくやというほどにくびれた細い腰の上にあるであろう、しなび切って痛いくらいに空腹を主張する、胃。
胃じゃなくて膵臓なんだっけ?
なんでもいいけど、とにかくこの空腹をなんとかして欲しい!
いまならコンビニ弁当程度でも股開く自信あるわ。
ん?・・・若さと共に性の高売り意識も戻っちゃったみたい。
でも、この子供みたいな体でセックスなんて出来るのだろうか。
男にしたら出来る出来ない関係なく突っ込むだけか。
つーか妊娠したら分娩できず、出掛かった胎児と共にあの地獄の苦しみの中で死ぬしか無いのでは?
「あー!やっぱ男に作り直して欲しい!!!!!」
空腹どころではない暗い予想に・・・いや、今の空腹のがツライ。
足を持ち上げる気も失せたのか、しばらく寒風に吹かれるまま佇んでしまった。
「・・・なんの音だろ」
一定の風向きで、金臭い音と人の声らしきものが運ばれてくる。
「風の乙女達、人と金の音を辿り其処への道を示して」
乙女なんだよな~性に夢をみるだけの姦しき妖精達。
今は寒くて全然仲良くしたい感じじゃないんだけど、マジで食いもんないと死ぬかもしれんて危機を抱くくらいお腹が空いてるので、仕方なく精霊を呼んでしまった・・・
交感の為に仕方なく緩めたマントの握りを毟り解くように冷涼な疾風があたしの体を撫で挙げてゆく。
ぎゃあああああざんむぅううううううううううい!!!!!!!!!
声も出せんわマヂで!
風の精霊達が笑いながら誘う方向からクッキリした音声と、拡大された映像が届く。
なぜに映像まで・・・ああ、空気のレンズ効果とかそういうアレなのだろうか。
デキる精霊じゃん風!さすが乙女というだけのことはある(イミフ)。
しかしその内容は、恐ろしい亜人達に襲われている馬車というイヤン近づきたくないわ的なソレであった。
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