第2話 キャラクリ2

「あのー・・・まだですか?」


「うん」


ぽちぽち


「・・・あの、もういいのでは?」


「だめ」


ぽちぽち


「その、そろそろ・・・」


「ちょっとそこに立ってみて」


「あ、ハイ」


あたしは紙と鉛筆(どっから出てきた?)を持つと、美しい少年の姿をスケッチする。


「横向いて・・・ちょいアゴ上げ・・・ソコ!そのまま」


かきかき


「あの・・・」


「喋らない!呼吸も止めて」


ШШシャーシャー


「えっ」


「天使でしょ?堪えなさい!」


「・・・・・」


バリバリ、ぽいっ・・・かきかき


「よし、いいわよ」


雑に五枚ほど描き飛ばした後、再びキャラクリインターフェースへ戻る。


「あの、今のは?」


「疲労した脳内デッサンの復元?・・・よ」


「はぁ・・・え、すごい!コレが私ですか」


あたしの雑なクロッキーを拾った天使がどびっくりドレッドノート級の吃驚している。


「うん・・・え?驚くところ?」


「美しいです。ジブンだなんて、信じられない・・・」


「アハハwwwあんたはもっと美しいって!」


あたしは自キャラをいったん保存、退避させると、キャラクリマシーン(なのか?)で目の前の天使をパパッと造形した。


男女二体。


おもれーなこのゲーム。


「羽根とか無いけど、こんな感じよ」


「嗚呼・・・」


めっさ見とれてる。


「それでもモノホンのアンタのが美しいけどね」


「・・・この姿を」


「うん」


「この姿を使って頂く訳にはいきませんか?!?!?!」


怒涛の迫力で天使が迫ってきた。


え?なんで??


「いや、そんな畏れ多いでしょ天使様の荷姿・・・じゃなくて似姿を纒うとか」


下手しなくても文明によっちゃ極刑だよ死刑。

つーか無事でいられんのかこんな姿で世界に降りて。


「かまいませんから!決定でよろしいですね!!」


「駄目です」


「なんでですか?!?!?」


うーん、なんなんだこの押しは。


「あたしが降りる世界てどんなトコなの?」


「えーと、剣と魔法の世界で悪人やモンスターを倒して盛り上がろう!て感じです」


この天使、どこの大・・・じゃない、なんて雑なテーマパーク設定なんだ。


「そんなとこにこんなエロ可愛い姿で出現したらソッコー犯され殺されて終わっちゃうでしょ」


「なっ・・・この姿が、臭く汚い野獣たちの群れに汚され・・・陰惨に・・・」


うーん、なんかめたくそ業の深い設定に息を荒げながらじっくりとなんかの想像をしている。


「よし!決めました。これの女性形をあなたの姿として決定します」


「マジかよ・・・」


「ただし、美しくてもおかしくはない種族、エルフとして創造し・・・その変化の一つとしてあなたの欲する姿形を与えましょう」


「え・・・変身みたいなヤツ?」


「そうですね、彼らエルフは人や他の妖精族に姿を変えることが出来ますから」


「逆じゃだめなの?人間が基本形でエルフに変身するみたいな」


「うーん、可能ですけど人間は寿命が短いですよ?しかもすぐ老化するから長く生きても辛いだけですし」


「あ!そっか、老化か。盲点だったわ」


50だと老化の入口みたいなもんだったからな。

文庫本が読めないくらいの不自由しか感じんかったし。


「そういうワケで、さあ!形が決まれば次なる段階、ステータス諸元の設定に移りましょう!」


は?ステータス??


「地位・・・貴族とかそういうヤツ・・・?」


「違います。肉体の器質的性能傾向や魔法適正を数値で表したものです」


天使奴が手を叩くと、宙空にズラリと謎のアルファベットが並んだ。


STR ***

INT ***

WIZ ***

DEX ***

AGL ***

VIT ***

MND ***

PIE ***

CHR ***

LUK ***

KRM ***


「上から順に説明しますと、腕力知能知識器用敏捷体力精神信仰魅力幸運業績となります」


ワケ分らん過ぎくてアタマくらくらしてきた・・・


「はぁ~、ダンナやコドモやマゴがなんか必死に数字を弄ってたアレか・・・適当でいいわ」


「ええ・・・これかなり重要ですよ?ちょっとだけでいいから考えましょうよ」


「うーん・・・まほー、てわかんないし・・・」


剣か・・・。

鼻の奥にカビ臭さと動物園ぽい臭気が蘇る。

大学のサークルでフェンシングやってたんだよな~。

でもゲーム的な戦闘とかで役に立つイメージが全然湧かない・・・あ、剣道もやってたけど昇段審査落ちてやめちゃったんだよな確か、小学六年・・・中一くらい?懐かしいwww


「じゃあ力と・・・敏捷さ?」


「器用さは対象の補足率に影響しますので、肉体系に組み上げるなら必須です」


「じゃあソレも。つーか全部最大にするとかムリなん?」


「そうですね・・・一つだけならいいですよ」


ラッキーw・・・なのか?


「じゃあ・・・ちょっとまって、信仰心?そんなのあるんだ」


「ああ、まぁ誰も振りませんけどね」


ふーん・・・


信じる者は救われる。

信じる者と書いて儲かる。

信じることは騙されること。


「じゃあ、信仰を最大にして」


「え?いえ、でも地味な神聖系の魔法にしか影響ありませんよ?」


神聖系て・・・ああ、男子系魔法か。


「あのさ、あんたや神様とかの力で遊・・・新たなる世に生を受けるんでしょ?同じ命を生み出す者として・・・まぁその、ちょっとロマンを感じるのよいいでしょ」


「うーん、そうですか・・・なんか申し訳ないのでINTも最大にしときますね」


棚ボナボーナスゲット!!

そして天元突破の狂信者爆誕!


それはともかく、ゲームみたいにちゃらんぽらん(語彙)に生きるなら・・・阿るみたいだけど、この天使ちゃんとか神様を裏切らないように保険をかけておきたいんだよ。



「INTは魔法ダメージ計算式の基本魔法ダメージ値と魔法属性ダメージ値、それに装備D値に整数倍の係数ボーナスが・・・」



天使ちゃんがなんか言ってるが当然聞き流して頷くだけなのであった。



@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る