第2話
これがデジャブというやつなのか、それとも予知夢というのだろうか―
そんなこと考えていたら、19時を回っている。
(まさかな…)
そこまで夢と同じは困る。
そう思っていたら、店長に声をかけられた。
「ねぇ、
夢と同じように由依がストーカーに合っているという説明を受けた。
夢と全く同じだ。
「そういうわけだから、一緒に帰ってあげてくれる?」
夢と全く同じになるとは限らないし、ストーカーがうろついているところを天使1人で歩かせるわけにもいかない。
「わかりました」
店長に言われて、早めに上がることになり、さっと着替えると結衣のテーブルへ向かった。
なんでお気に入りのジャケットを着なかったんだ、と夢と同じ失敗をしたと嘆きつつ、由依に声をかけた。
すると、「ごめんね」と小さく由依はつぶやいた。
「いえいえ」
弱々しい姿は、さらに儚げでより由依の美しさを際立たせている。
「じゃあいきましょうか」
2人で店を出る。
「寒い」由依がそう呟くと、白く息が濁って消えた。
由依と並んで歩く。
クリスマスではないが、街はイルミネーションが綺麗でまるでクリスマスデートだ。
しかも感覚としては2回目のデートになる。
「あの、水野くん?だよね?」
「あ、名前っすか?
「正広くん、送ってくれてありがとう」
下の名前呼びされるのは2回目でもやはり照れてしまう。
「あ…いえ…」
「最近本当に困ってて」
そうだ、あのストーカーがこの様子をどこかで見ているかもしれない。
夢と同じことになることはないと思うが、念のため警戒はしておくにこしたことはない。
正広は辺りを見回すが、見える範囲にはいないようだ。
「どこかでストーカーが見てるかもしれないですし、どこかで巻かないといけないですね」
「えぇ」
由依が不安げな顔をしている。
そう言えば夢では本の話をした。
本当に予知夢なのか、試すにはいいかもしれない。
「あの、いつも本を読んでらっしゃいますよね?」
「えぇ」
「もしかして、賞を受賞した・・・?」
「そう!正広くんももしかして読んでる?」
「あぁ・・まだ読んでなくて、読んでみたいなぁとは思ってるんですけど」
「じゃあ貸してあげる。ちょうど読み終わったの」
ふふふ、と嬉しそうに正広の手に本を乗せた。
(何もかも同じだ―)
例の公園が見えてきた。
予知夢なんてありえないけど、念には念を入れておいた方がいいだろう。
何も言わずに通り過ぎようとしたら、「この公園を突っ切って巻こうか。そのまま走っていけばきっと追いつかれないと思うし」と聞きたくない提案をされた。
「いや~でも公園暗いし、危ないんじゃ・・・」
「大丈夫、公園抜ければすぐなんだから」
予知夢だと信じられないのと、由依に押し切られたのもあって、公園の入り口まで来てしまった。
由依と公園の入り口まで行って目を合わせると、一気に走り出した。
(予知夢なんてありえない)
だが、非情にも黒のパーカーのフードを被った男が反対方向からやってきた。
刺された時の生々しい感覚が蘇ってくる。
由依は震えながら、正広の後ろに隠れた。
2回目だが怖さが勝って上手く動けない。
ジリジリと男が近寄ってくる。
すると、男の手にはきらりと光るナイフがあった。
(またかよ!)
「由依、君が悪いんだ」
そう言って男が走ってくる。
逃げることも戦うことも出来ない。
「ゔっ…」
腹に衝撃と痛みがはしる。
腹を見ると、ナイフが刺さっている。
じんわりと赤い血が滲んでいく。
由依の悲鳴が聞こえる。
熱い…痛い…
膝からがくりと倒れる。
(俺本当にこれで・・・これで・・・)
由依が何か言っている。
でももう何も聞こえない。
由依の口が何か動いてー
(ま・・・・?)
時計台の時計が見える。
19:31
だんだん視界がぼやけていく。
(何でこんなことになるんだよ…俺の人生これで終わりかよ)
やがて何も見えなくなった。
「うっ…」
正広は眩しくて、目を覚ました。
天井が見える。
見慣れた天井だ。
起き上がると、自分の部屋だ。
腹を触ってみるがもちろん怪我などしていない。
「・・・まさか」
布団から出ると、一階のダイニングへ駆け下りる。
「明日はクリスマスイブ!ということで、丸急百貨店もプレゼントを買う人で賑わっています!」
可愛らしいレポーターが、クリスマスツリーの前でニコニコと話している。
もはやこの笑顔が可愛らしいとは思えない。恐怖だ。
「母さん・・・俺のほっぺたつまんでくれ」
「バカなこと言ってんじゃないよ、もう家でないとバイト間に合わないんじゃないの?」
母親に言われて時計を見ると、もうそろそろ出ないとヤバい時間だ。
さすがにバイトに行きたくないとは思う。
夢かもしれないが、あんな思いは2度とごめんだ。
だが―
「ごめんね」と辛そうにつぶやく由依
「正広くん、送ってくれてありがとう」と微笑む由依
正広が行かないということは、由依に矛先が向かう可能性がある。
コーヒーをぐっと飲み干すと、テレビを消して、コートを掴んで家を飛び出した。
外に出ると、寒い風が吹き付ける。
「さむッ」
思わず声が出てしまう。
このままいくと同じことになる可能性が高い。
夢なのか現実なのか、そこは一旦おいておいて、対策をしておかねばならない。
正広はコンビニに寄った。
「そういうわけだから、一緒に帰ってあげてくれる?」
予想通りの展開に食い気味に、「わかりました」と返事をした。
こうなったらやってしかない。
店長に言われて、早めに上がることになり、さっと着替えると結衣のテーブルへ向かった。
またお気に入りのジャケットを着損ねた・・!
また同じ失敗をしたと嘆きつつ、由依に声をかけた。
すると、「ごめんね」と小さく由依はつぶやいた。
「いえいえ」
弱々しい姿は、さらに儚げでより由依の美しさを際立たせている。
「じゃあいきましょうか」
2人で店を出る。
「寒い」由依がそう呟くと、白く息が濁って消えた。
由依と並んで歩く。
クリスマスではないが、街はイルミネーションが綺麗でまるでクリスマスデートだ。
しかも感覚としては3回目のデートになる。
「あの、水野くん?だよね?」
「水野正広です」
「正広くん、送ってくれてありがとう」
下の名前呼びされるのも3回目となると、頬が赤くなる程度だ。
「いえいえ」
「最近本当に困ってて」
「大変ですね・・・」
不安げな由依の表情を見ながら時計をみると、19:15を指している。
いつも15分程度デートしているらしい。
折角なら由依とお近づきになれるように質問してもいいだろう。
「えっと、あー彼氏とかに送ってもらったりとかできないんですか?」
さり気なく聞こうとするが、声が裏返ってしまう。
「彼氏はいないよ」
由依はくすっと笑った。
「いないんですか!?」
「えぇ」
「絶対いると思ってました」
「いないよ~。というか」
由依が視線を落として、「いなくなっちゃった」と寂し気に微笑んだ。
その微笑みに胸が痛くなるほど鼓動が早くなる。
「いなくなったというのは・・・?」
「うん・・・」
その質問には答えず、少し前を歩く。
表情を見られたくないのかもしれない。
そうこうしている内に例の公園にやってきた。
「この公園を突っ切って巻こうか。そのまま走っていけばきっと追いつかれないと思うし」
そういう由依に頷くと、公園に入った。
もちろん、予想通り黒いフードの男が現れた。
男がじりじりとにじり寄って来る。
すると、男の手にはきらりと光るナイフがあった。
男がナイフを持って走って来る。
身体に衝撃が走る。
が、しかしナイフは刺さらない。
「何回も同じ手を食うわけねぇだろ!」
そう言ってお腹から少年〇ャンプを取り出した。
少年〇ャンプにはナイフの傷がついている。
「3回目だぞ!なめんな」
きょとんとする由依を背中に守りつつ、ストーカーに少年〇ャンプを叩きつけた。
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