みとし山中遺体遺棄事件 捜査内容

【日暮逢の捜査ノート】

 地元の警察機関とK支部の捜査員と連携し、被害者(足立さん)の捜査を開始した。



【警察組織によると足立さんの失踪は、既に遺族から相談されていたようだ】

 14日昼頃、北みとしの集落に住む被害者の母は、彼の同僚を名乗る男性から、被害者が無断欠勤していると連絡を受けた。被害者は独身であり、六敷町のアパートで一人暮らしをしているため、彼の母は電話にて被害者に連絡を取ろうとした。


 しかし電話は繋がらず、胸騒ぎを覚えた彼女は偶然仕事が休みで家にいた息子(被害者の弟)と一緒に被害者のアパートへ向かった。この時アパートの管理会社に連絡をした。


 家族がアパートに着くと、ちょうど現場に到着した管理会社の担当と合流。呼び鈴に反応はなく、担当者がマスターキーでドアを開けた。部屋の中に被害者はおらず、机の上には遺書が残されていた。



【遺書の内容】

「会社の金を使い込んでしまいました。いつか返せばいいと気楽に考えていたら、返せなくなってしまいました。責任を取る為に、誰にも迷惑をかけない場所で人生を終わらせます。申し訳ございませんでした。」


 遺書はパソコンを使って書かれ、印刷されたものだった。被害者が変死体で発見されたことから、殺人事件の可能性を追求していく。



【現場付近を通る車】

 六敷町のライブカメラにて、13日深夜みとし村方面に向かい、14日早朝近くに町へ引き返すシルバーのワゴン車を確認。持ち主の特定を急いでいるとのこと。



【田畑さんについて】

 イレイザー注射後、彼は朝軽トラックで家を出てからの記憶を失っており、遺体を見たのかどうか、確認することはできなかった。四辻さんがイレイザーの使用に否定的だった理由がわかった気がする……。


 念のため靴のサイズや形等を調べさせてもらったけど、彼の靴のサイズは犯人の物と思われる足跡よりも小さかった。



【検死について】

 片足が怪異の依り代になっているため、当機関にて進める。みとし村で発生中の現象が影響して現場が逼迫している為、微力ながら協力させてもらった。


 今日は記憶障害が特に酷いから、ちゃんとできるか不安だったけど、現場に立つと当然のように指は動いてくれた。

 あたしは研究部で、一体何の研究をしていたんだろう。考えると頭痛がする。これはストレスの所為? それとも、いつもの記憶障害の前触れ?


 以下、現在判明している事


 ・死亡推定時刻は昨夜(13日)の夜9時から23時。胃の内容物が多い事から、直前まで飲食をしていた可能性は高い。


 ・頸部に爪や指による圧迫痕を発見、扼痕を疑い、被害者の死因は扼殺と推定。


 ・被害者の爪から犯人の物と思われる皮膚を採取した。


 ・遺体がバラバラに切断されたのは死後。ノコギリのようなもので切られていた。現場の痕跡から、犯人は遺体を神の目の前で切断したと考えてよさそうとのこと。


 ・左足の膝から下は今も見つからない。やはり被害者の霊の依り代になっていると考える。



【片足の怪異について】

 こちらは全部、四辻さんが担当してくれた。


 片足に取り憑いた被害者の霊と思われる怪異は、穢れの影響を受けて凶暴化しているかもしれないらしい。

 加害者とその周りに霊障による被害を起こす可能性がある為、支部の捜査員に協力してもらい、被害者の職場である六敷商事を中心に監視してもらうことになった。



【四辻さんの奇行】

 検死から戻ると、四辻さんがお葬式で使う小刀、祈祷済みの折り畳み式バケツ、大量の雑巾と水が入った2Lのペットボトル数本をリュックサックに入れているのを目撃した。


 どうやら被害者のスマホを調べた結果、これらが必要だと判明したらしい。理由を聞いたら四辻さんは、

「足を洗わせろ——って非通知着信があったんだよ」

 って言ってたけど……どゆこと?


「ところで、パンパンの大きなリュックサックが二つあるんですが、まさか一つはあたしのじゃないですよね?」


って聞いたら、意味深な笑みを返された。一つはあたしが持たなきゃっぽい。重そうだけど持てるかなぁ……。



【遺留品について】

 スマホ:被害者の遺留品。被害者が勤めていた六敷商事の、経理関連書類を撮影したと思われる写真が複数枚入っていた。被害者の遺書に横領に関する記述があったことから、四辻さんは捜査当局に調査を依頼した。


・鍵の束:被害者の遺留品。自宅の鍵だけが見つからない。犯人に持ち去られたか。


・スーツ:被害者の遺留品。遺体を切断する時に、邪魔になるため剥ぎ取られたと思われる。


・ノコギリ:切断に使用されたもの。


 このノコギリは現場に残されていた。


 持ち主の名前が書かれており、みとし村村民に同姓同名のお爺さんがいると判明。


 四辻さんが太田捜査官に相談して事情聴取してもらったらしい。

 お爺さんは一週間ほど前に現場近くで作業をしていて、その時にノコギリを失くしたと証言したようだ。昨夜は公民館でご近所さんの集まりがあったらしく、彼は泥酔して奥さんに迎えに来てもらったそうだ。他の村人もそれを目撃している。犯行は不可能と思われる。


 また、ノコギリからは彼以外の指紋が検出された。犯人のものか?

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