第12話 関係者集合
「パパ、大丈夫?」
「……大丈夫だけど、他の場所でもよかったかもな」
俺たちがいるのは町から続く森の中。
もっと詳細に言うならセレスの亡骸を発見したところだ。
昼間なら日差しが入って冬でもそれなりに暖かいのだが、夜になると半端なく冷え込む。
「すみません、私の我儘に付き合わせてしまって……」
「いやいや、人々の悩みを聞くのも牧師の役目なので」
体を振るわせて言っても説得力がないのは重々承知だ。
ちなみにここを指定したのはセレス本人だ。
もちろん、彼女にはここで遺体を発見したのは説明した上での決定だ。
「カレンさん、大丈夫かな?」
クレアが俺の法衣の裾を掴みながらか細い声で呟いていた。
「大丈夫だよ、あの子に敵う相手なんて、そうそういないから」
笑いを交えながらクレアに答える。
カレンにはドロシーをここに連れてくるようにお願いをしている。
ドロシー単体でダメならアルスにも話しても構わないと……
——あまりいいやり方ではないが。
クレアと話しているうちに、こちらへ近づいてくる足音が聞こえてきた。
「クレア、念の為俺の後ろに」
カレンたちではなかった場合を見越してクレアを俺の後ろへ移動させた。
もしかしたら魔物や野盗という可能性も0ではない。
「先生、お待たせしました」
そんな俺の考えは杞憂に終わったようだ。
カレンの声が聞こえたと思うと、すぐに3人が姿を現した。
カレンが先頭になってその後ろにはドロシーとアルスの姿が見えた。
どうやらアルスを巻き込む結果になったようだ。
「シグナスさん、こんな遅くにどうされたんですか?」
真っ先に声をかけてきたのはアルスだった。
彼の横でドロシーはこちらを無愛想な表情でこちらを見ているだけだ。
「こんな夜遅くにお呼び出ししてしまい申し訳ございません、お二人に伝えておかなければいけないことがありまして……」
俺はその場で大きく頭を下げる。
「……いいから早く話しなさいよ!」
ドロシーは会ってから聞いたことのないぐらいの声で叫び出す。
おそらく、ここがどんな場所なのか気付いたのだろう。
「わかりました、それじゃセレス」
「はい」
彼女が声をあげるとアルスとドロシーは目を大きく開ける。
「すみません、肩失礼いたします」
そう言ってセレスは俺の肩へと移動した。
「アルスくん、ドロシーちゃんこんばんわ」
「せ、セレスなのか……!」
アルスは俺の肩にいるぬいぐるみをじっと見ていた。
「ふ、ふざけないで!!」
その直後、ドロシーは甲高い声をあげる。
彼女の体は小刻みに震えていた。
おそらくだが、寒さによる震えではないのだろう。
「どんな仕組みでセレスの声を出しているのかわからないけど、死んだ仲間をこんなふざけたことに使うなんて、冒涜もいいところよ! あなたそれでも牧師なの!!」
ドロシーの声が森の中に響き渡っていく。
彼女の様子を見て、心底、町から離れた森に来てもらって正解だったと思えてしまう。
「これはセレスさんの希望でもあります」
俺が答えるとセレスはコクリと頷いていた。
「こんな姿でセレスだといっても信じてもらえないと——」
「——そうか、そういうことね!」
セレスの言葉を遮るようにドロシーは再び大声を上げる。
そしてすぐさま、杖をこちらに向けていた。
「ファイアボルトッ!」
ドロシーの杖が光ると同時に炎がこちらへと襲いかかる。
「ドロシー、何をしているんだ!」
「こいつらはネクロマンサーよ! 私たちの仲間の魂を無理矢理操っているのよ!」
叫びながらも何度も炎の魔法を発動させ、こちらへと放つ。
「セレスの……仲間の魂を弄んだ罰よ!!!」
ドロシーは目の前で燃え盛る炎を見て、誇らしげに叫ぶ。
「このッ!」
炎の中から1つの影が飛び出し、スパッと何かを寸断する音が聞こえた。
寸断されたのは杖の先端で、ドサっという重い音を立てながら地面へと叩きつけられていた。
「なっ……」
その様子を見て驚くドロシー。
彼女の喉元には鋭く尖った刃の先端が突きつけられていた。
「……流石だなカレン」
「先生のサポートがあってこそです」
カレンは笑顔で答えながら炎が燃え上がっている場所を見る。
その場所は瞬間的に風が巻き上がり、燃え上がっていた炎は一瞬にして消え去っていた。
「クレア、セレス……大丈夫か?」
「……うん」
「ちょっと怖かったですけど、今は大丈夫です」
2人は和かな表情で俺を見ていた。
正確にいうとセレスの表情はまったく変わらないのだが……。
「さてと、これでゆっくり話すことができそうですね」
俺がドロシーに近づこうとすると、アルスが驚いた表情のまま彼女の前に立つ。
「ど、どういうことなんですか! ど、ドロシーが一体何を!?」
「アルスくん……」
アルスの顔を見て、セレスは悲しそうな声を上げる。
「アルスさん、あなたもセレスさんの仲間だというのであれば是非、彼女の話を聞いてあげてください」
俺がセレスの代わりに伝えるとアレスは困惑した表情へと変わっていった。
「な、何の話ですか!?」
「セレスさんの最後の話ですよ」
その後にセレスはゆっくりと話していくのだった。
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