第16話 お義父さんにメロメロな後輩は、とうとう反撃するようです!!

二人は、ベンチに座りカフェオレを飲みながら話をした。


 凜は、全てを事細かに伝えた。それを、優斗はただひたすら、うなずきながら聞いていた。






「―――なるほどな……」




「この話って、優香は知ってるのか?」


「……うん」


「なるほどな……」




 優斗は、考えていた。


 義理とはいえ、やっぱり家族観での恋愛って……どうなんだ?


 アウトか? セーフか?




 いや、こんなかわいい凜が、そのことに気付かないはずがない。ましてや、優香だって相談を受けていたのなら、真っ先にその点を指摘するはずだ。






 となると――――。




「俺がおかしいのか」




「?」




 ※優斗君の考えは至って普通です。このお話は、そのあたりのことを風味だけで楽しんでいただける作品できるよう、心がけております。 








 それにしても。


 ここまで拗れた恋バナも、そう聞かない。


 ていうか、凜もおっさんも結構やることやるんだな。一緒に寝るとか、下着とか、GPSとか。








「俺さ、二人は両思いだと思うんだよな」


 優斗は、真顔でそう言った。






「はあ!?」


 と驚く凜。


 いやいや、全然両思いだろう。




「初対面で俺にあんだけ言っておいて、ただの親バカは絶対ない」




「わかんないじゃん! 昔から、りゅうはあんな感じだし」


 昔から好きってパターンもあるじゃないか……。


 この二人の相手に対する愛は、そこが知れないぐらい深く重い。




「……こんな恋、成就すると思えないし」




「だったら、俺が協力する」


「え?」


「俺このまま終わるとか、嫌だから」




「……? 私、もう優斗と付き合わないけど」


 ガクン、と―――しっかり目にショックを受ける、優斗。




 そこまではっきり言われるとは……まあそれぐらいはっきりしている方が、メリハリがあっていいのかもしれないが。




「俺とお前は、もうほとんど終わったようなもんだけど……俺だって凜の事好きだったんだ。好きなヤツの事は応援してやりたいっていうか、仲良くして対って言うか……」




「それってつまり?」




「だ、だからっ俺が、凜専属のキューピッドになってやるっていってんだよ!」


 恥ずかしそうに優斗はいう。




「お前が、結婚式上げるまで、見送ってやるって言ってんだよ!」


 そこまで言う気がなかった優斗だったが、なぜか勢いで言ってしまった。


 だが、それではまるで。




「……お父さんみたい」


 凜がつぶやく。 


 そう、結婚式で娘を見送る父親のような。




「優斗は、私の第二のお父さんってことなの?」


「は? いや、そんなつもりはないけど……と、とにかく!」








「俺、このまま気まずくなるとか、話さなくなるとか、そういうの、嫌なんだ!」






「―――――っはは、あはははは」


 ツボに入る凜。




「な、なんだよ! さっきまでお通夜みたいな顔してたくせに!」




「だって、なんか……なんだか、優斗案外子供なんだもん」


 王子様な優斗も、優しい優斗も、子供っぽい優斗も、全部含めて優斗である。






「―――ありがとう」














「だああああああ~しゃらくせいいいいい」


「飲み過ぎだよ、ちひろちゃん」




 やっぱり失敗だった。


 家になんか呼ばずに、現地解散すればよかったんだ。


 遊園地であの光景を見た後、俺たちはすぐさま遊園地を離れ家に帰った来た。


 コンビニで酒やつまみを買って。




「八雲さ~ん、もう一缶! 次はそっちの~」




「ちひろちゃん、弱いんだからの飲むのやめなよ」




「ん~っ、3パーセントじゃ酔えな~いっ! もっと飲むんじゃァ~」


 なんてことを言って、ちひろちゃんは買ってきた酒をほとんど一人で飲み干した。


 俺は、全く進まなくてまだ1缶目の半分。




「―――――」




「辛気臭いですよぉ、八雲さん」




「だって……」




「あのねえ、娘のキスシーン見たからなんですかぁっ! あんた、親バカすぎるんですよ!」




「親バカっていうか……」


 俺はあの時、何かを感じた。


 それは、親として置いていかれるような気持ちじゃなくて―――――。






「――――――」


「――――――」


 部屋が、静寂に満ちる。






「……八雲さん」






「私のこと、きらいですか」


「いや、そんなわけないだろう。こうやって家に呼ぶくらいには、良い後輩だと思ってるよ」










「―――じゃあ、私でいいじゃないですか」


 つん、っとビールの缶を突く、ちひろちゃん。

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