第15話 娘にメロメロな彼氏も、黙っていられません!!
「―――――どうして」
一ミリまで迫った、距離。
それを、止めたのは優斗だ。
私のわがまま、聞いてくれるって。
「……なんとなく」
それを言うと、凜はものすごく怒った。今までに見たことがないような、顔をしていた。
「な、なんか、しちゃいけない気がして!」
「……凜、自分じゃ気づいてないかもしれないけど、すごい顔してたよ」
彼のそれは、苦笑い。
キスをする寸前、びくついて固まる体。なぜか驚いている瞳。そして、最後にそらした視線。
その視線は、なんだかドキドキするような甘い視線じゃなくて―――自らを守るための視線。
「―――お前、俺の事好きじゃないだろ」
「……え?」
凜は、言い当てられたことにびっくりした。このままずっと、騙しとおせると思っていたから。
「……知ってたの」
「知ってたっていうか……うすうす勘付いてたっていうか」
「――だったら止めないで、やっちゃえばよかったのに」
「え?」
優斗は驚いた。凜の声が、だんだんと涙声になっていくのを感じて。
下に向けていた顔を前を向けようとすると、凜に手で目を隠された。
どうやら、見られたくないらしい。
「キスしちゃえば、絶対負けなかったんだよ」
私も、優斗も。
「いや」
「しなくてよかったよ。絶対後悔してたもん」
凜の手を避けて、優斗は笑った。
「凜も、俺も」
優斗は、ただ笑みを浮かべて、凜を撫でる。
「始めては、好きな人とやんな。後々苦しむのは、お前自身なんだから」
感じていたことが、全て辻褄が合ってしまうような。俺は、最初から負けていたんだ、ということを優斗はここぞとばかりに理解した。
それでも、怒ることをせずただ、「やっぱりな」って笑うだけ。
凜は―――――初めての後悔をした。
否、今までに後悔したことはある。しかしそれは、別にあとからでも取り返しがつくか、つかなくてもどうだっていい事だった。
これは、今までで一番の、後悔。
適当な気持ちで、告白してしまった自分への怒り。
そして、あんなにも誠心誠意、何度も何度も告白してくれた優斗の気持ちを裏切ってしまった、自分への憤り。
ぽつり、ぽつり、涙があふれてくる。泣いていいのは、自分ではなく優斗であるとわかっているのに、凜の涙は止まらない。
「――――謝んなくていいから」
察した優斗は、そんなことを言う。
「そんなわけにはいかない! ごめん、ごめん……ごめん、なさい」
「だから、謝んなくていいって!!」
目の前で、土下座しようとする凜をなんとか止める。
どんなに大丈夫、大丈夫と優斗が言っても、凜の涙は止まらない。
「……私が、告白なんかしなきゃよかったんだ。そうすれば、傷つけたりしなかったのに」
凜は、優斗の顔をしっかりと見た。
「―――どうして」
「どうして優斗は、優しいの……?」
くすっと笑って、優斗は言った。
「……男ってのは、惚れた女にかっこよく見られたい生き物なんだよ」
「―――っう、ううううッ!!」
優斗の言葉に、凜の涙が勢いよく流れだす。
「あー、もう! いいかげん、泣き止みやがれ~!」
うりゃりゃりゃりゃ、と凜のほっぺたをつねる優斗。
「優斗、だいすき~っ! 恋愛的な感情じゃないけど……」
「お、おい……はっきり言われると傷つくんだが……」
二人は、ベンチに座りカフェオレを飲みながら話をした。
凜は、全ての経緯を事細かに伝えた。それを、優斗はただひたすら、聞いていた。
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