第14話 娘の攻撃がクリーンヒットして倒れました、父です!
凜がいた場所は、観覧車。
「か、観覧車っ!?」
そんなの絶対ダメだ! 中の様子が見れない上に、密室空間。
何が起こってもおかしくない!
一度乗ってしまえば、一周回るまでは降りられない!
つまり、俺がスーパーマンになろうが、何しようが、どうしようもできない!
もし観覧車の中で、ピ―――なことが起こったら。
「正気を保てる気がしないぞっ! 俺はぁぁぁぁぁああああああああああッ!」
パニックに陥りながら、俺はちひろちゃんの手を引っ張った。
「えっ、ちょっと!?」
「行くぞ、ちひろちゃんッ!」
俺は、走って観覧車の下へ向かった。
が、全く見つからない。観覧車のあたりは、人気は多い。とはいえ、俺は親バカ。
自分の娘など、一瞬で見つけられる。
い、いつもならば。
「……確かにこの付近にいるはずなのに」
とりあえず、列に並ぶことにした。背伸びをして、二人を探す。しかし一向にその姿は見えない。
どうしてだ?
「――ちひろちゃんも、探してくれ」
「探してますけど、いなさそうですよ? そのGPS壊れてるんじゃないですか?」
いやいや、そんなはず。
「とにかく、もっと必死になって探し―――――っ」
後ろから押されて、転びそうになりながら前へ出た。
目の前には、観覧者の列の最前列。
そして女性のキャスト。勢いよく出てきた姿、そして恋人つなぎでの登場に、にんまり笑って。
「アツアツカップル様、ご来場でございますね!」
「ああ、いや、違うんです! 人を探していましてね……」
と言っても、全く聞き入れられず。
「素敵な旅へ、行ってらっしゃい!」
にこやかな笑顔で見送られた。
「ちょ、まっ―――」
俺の生死など聞かず、まるでカプセルに閉じ込めるが如く、観覧車に乗せられた俺達。
しかし、俺たちの前にも後にも、やっぱり彼らは居ないようだった。
ハメられた? いやまさか。
「ち、ちひろちゃん……?」
この状況に、口を開かないちひろちゃんが不思議になって、後ろを向いた。
「……っ」
何故か、頬を赤らめるちひろちゃん。いや、今それどころじゃないから。
二人っきりだね、みたいなテンションには、どう頑張ってもなれないから。
俺は彼女を放っておいて、もう一度探すことにした。
「クソ―――凜、凜……どこだ」
「あ、八雲さん、あそこ」
観覧車の窓から必死に探す俺を横目に、ちひろちゃんは指差した。
観覧車から少し離れた場所。ちょうど、人の少ない場所に、ぽつんと。
二人の影が見えた。
ここからでも、細かい部分までは見えないが、二人の様子ぐらいは見える。
「やっぱり、乗ってなかったんだ!」
気づいたときには遅かった。
「―――――――っ!」
見えた。
凜の口元に指を置き、上を向かせ顔を近づける、彼の姿が。
「―――あ、らら~……って八雲さん!?」
俺の意識が遠のく。
「八雲さん! 八雲さん! 聞こえますか!? ど、どどどどどどどどうしよう! 口から泡がッ!」
頭上から声がする。目の前は、ゆらゆらしていてよく見えない。呼吸も上手くできなくて、異常なまでな冷や汗が全身を伝う。
「しっかりしてくださいっ、八雲さん! そんな――、娘のキスシーン見たぐらいで気絶しないでくださいよ! こっの親バカぁぁぁぁぁあああああああッ!」
とこんな時にもツッコミ(?)を入れる、ちひろちゃん。
「……い、家、かえ……る……」
俺は遠のく意識の中で、そんなことを呟いた。しかしその望みが、叶うわけはなく。
観覧車は、あと数分間回り続けた。
「―――――どうして」
凜が、つぶやいた。
一ミリまで迫った、距離。
それを、止めたのは優斗だ。
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