第12話 やはり娘と父親は、心が通じ合っているようです!

ということで、本日我々は遊園地に潜入しています!




 お化け屋敷に、ゴーカート、そしてジェットコースター!


 娘を追いかけることそっちのけで、良い年こいたおっさんは遊園地を楽しんでいた。しかも隣には、自分よりも一回り若い女の子。




 遊園地なんて、久しぶりで子供みたくはしゃいでしまった。いやー、最近の遊園地はすごいんだな。


 


 正直言って、めちゃくちゃ楽しい。










「それにしても、人が多いですね」


「土曜日だからね。子連れも、カップルもいっぱいいるね」




 こちらとしては有利だ……ッ! 人口密度が増せば増すほど、我々は隠れやすくなるからな。


 


 さらに言えば、今の俺の服装はクソダサい!


 メガネ、帽子、カツラ、そして平成のオタクのようなジーンズとシャツ! 


 


 八雲龍之介(俺)とバレることはまず、ない!




(まあ、ちひろちゃんはいつもの服装だからな……そこでバレる可能性はあるが、バレたらちひろちゃんを残して逃げる!)




「でも、どうしてここまでやるんですか? 別にバレてもいいじゃないですか。割り込んで、一緒に回るとか」


「わかってないな! ちひろちゃん!」




「……うわ」


 オタクが力説するみたく言えば、ちひろちゃんはいとも容易くひいていく。




「親ってのはな、子供第一で考えてるんだよ! ここで親が乱入すれば、今日からベッドは分離される! 危機なんだよ! 子離れは!」




「はあ」


 左様で、みたいな反応をされると、案外傷つく。




 わからないだろうな! 子供のいない君には!




 しかし、高校生にもなって思春期も来ず、昔と変わらずの距離感でいてくれるというのは、奇跡!


 周りを見れば、奇跡中の奇跡である!




 俺の頭の中で、可愛い凜の顔浮かび声が聞こえてくる。




『りゅう、りゅう、りゅう―――(エコー)」






 俺は絶対に、凜に嫌われたくない!












「―――次は、メリーゴーランドだ……!」




 彼らが乗ったのを見て、俺はメリーゴーランドに近づく。このアトラクションはまだ安全だ。


 二人がくっつくことが少ないから。


 と。




「凜、大変だ!」


 優斗くんが叫ぶ。


「へ?」


 凜は何を言っているのかわからず、後ろを振り返り優斗君の方を見る。


 優斗君は、必死にそれを見ないよう両目を手で覆っている。隙間からガン見しているがな!






「凜の―――パ、パパパパンツがぁぁッ!」 






 凜が馬に乗ったとき、フレアのミニスカートが柔らかい風に揺れ、絶妙にパンツが見えそうになった。


 まずい、凜がピンチだ。




「凜!」


 手を伸ばしかけたとき。




「ダメです! 八雲さん! まだお昼も過ぎてません! バレるにはいくらなんでも早すぎます!―――って、ええ!?」




 俺もちひろちゃんも、驚いた。




「俺が助けてやるッ! りぃぃぃぃぃぃんッ!!」




 優斗くんは、童謡の王子さながら白馬から飛び立ち、そして凜の後ろに降り立った。


 こうすることで、パンツを見えなくしたのか!?




 その行動力――――一歩間違えれば生死にかかわるというのに、この男恐ろしい。




「優斗……よくわかんないけど、ありがとう」








 メリーゴーランドは、すぐさま停止し店員が、二人の安全を問うた。


 優斗くんは、全く怪我をしていないようで、ぴんぴん飛び跳ねている。男子高校生らしい。


 凜も怪我をしていないようで、落ち着いていた。


 


 すると。




「っ!?」




 コンマ数秒。俺は、ドキッとした。










「? どうがしました、八雲さん」


「―――、気づかれたかも」


「えっ?」




 凜が、こちらを見た。しっかりと。


 


 通りかかった人を見る程度の視線ではなく、はっきりとその人がだれかわかったうえで見るような……。


 ま、まさか、俺の変装技術を、わずか数秒で見破ったというのか!?


 


 さすが、愛! じゃなくて!


 


 これはまずいかもしれない。




「……ちひろちゃん、一時撤退だ」


 そう言って、一度この場を去った。














 メリーゴーランドの騒ぎもようやく落ち着いて来たかというとき。




「―――凜? どうかしたか?」 


 優斗が聞く。






「……りゅうがいた。あの女も」


 凜は、逃げた影を、睨むように言う。

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