第10話 父親にメロメロな娘は、実は策略家(?)です!

「――――え」


 ちひろの声は、止まった。


 娘――――さんなのだろう。がしかし。


 気になったのは、服装だ。






―――黒の、ベビードール。






 注)ベビードール(英語:babydoll)とは―――、女性が着用するアンダーベストの切り替えからるーすな広がりの裾を持つナイティとしての衣類。1970年代に出現した。(ウィキペディア引用)


 


 いわゆるキャミソールに似た、セクシーな感じの……アレである。


 つまり、この娘……セクシーな下着姿でお出迎えをしたのである。




 肌の白さとのコントラスト、そして透け感のある、それ。




 






 それにしても、おっぱいデカッ!




 




 服装の次に目が行ったのは、その体つきだった。


 


 デカすぎる胸は、普通Tシャツ等の厚みであれば逆に太っているように見せるはずが、この透き通る素材では、胸とウエストの差を強調させる一方だ。


 


 それに加えて、美しいくびれ。


 


 日本人女性は、欧米人と違ってくびれが出にくく、四角くなりやすいと言われていることが、完全に否定されるほどの、すさまじいくびれを魅せつける。


 


 玄関の明かりの下、白い肌そしてその美しい体は、薄っぺらい下着のみで隠される。しかし、そのようなものでは隠しきれず、あふれ出す何かが、ちひろをクリ殴りする。








「―――何じろじろ見てるの。気持ち悪い。あんたのための衣装じゃないんだけど」


 感じ悪ッ!睨まれた。






「は、はあ? 大人にそんな口のきき方していいのかな?」


 八雲さんはあんなにいい人で、いっつもぽやぽや~ってしてるのに、娘こんなんかーい。






「――――」


 面倒なことには、口を開かないらしい。


 ぷい、とそっぽを向いた。




 こ、この女ァッ!




 ちひろの頭の中では、怒りそして永遠の宇宙が広がり続けていた。言葉も出てこない。


 


 だが! ここで負けるような、女ではない!


 


 そこいらのまだそういうこともしたことがない女子高校生と、もう十分にそういうことを経験してきた30手前の女! 手前と言えど、まだ20代!




「あ、あのね~。娘ちゃん、そういうのお父さんの前ではしない方がいいんじゃないかな?」




「――――狙ってんの、見え見えなおばさんに言われたくない」


 鼻で笑って、言われた。




 ぐあああああああッ!


 


 女子高生のくせに、生意気なッ! この子、超強いじゃない! もしや、色々経験済み!?


 そりゃ、八雲さんもメロメロだわ!






「八雲さんも、もうおじさんよ! 子供に興味ないッての!」


 


 ていうかこの子、娘なんでしょう!? 娘って、父親を誘惑するもんなの!?


 それとも血がつながってないから、倫理観的にはオッケーってこと!?




「おばさんにも興味ないと思う。それに子供とか関係ない」








「―――おっぱいは、いつだって正義だから」




 私の胸を見て、ぷぷっと笑った後。


 そいつは、自分の胸を見せびらかす見たく、少し前傾姿勢になった。


 大きくそしてしずく型のそれは、重力にのっとって少し垂れる。そのなんとまあ、官能的に見えること……。






「……おばさんの、まけ」


 べーっ、と舌を見せた。






 コイツ! 全部分かったうえで――――ッ!




 八雲さん……こいつ相当なやり手ですよ……! 狙った獲物は離さない。八雲さんを悩ませて、わざと……!




 そう、眠っている彼に言ってやりたかった。




「こんな子供に負けるものですか!」


 と大声を、思わず声をあげてしまった。






「ん~?」




 一生懸命担いでいた、思い人が目を覚ます。




 ちひろは思った。この状況、いささかまずいのではないか?


 目の前にいる娘。それは完全に誘惑するための格好で、こんなもの父親が見たら……。




「や、八雲さん、見ちゃ―――――」






「ん~? 凜……?」

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