高嶺の君とモブの僕

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第1話

中学校。

ここに受かるために青春を捨てた、、と言うほどではないが、ほどほどの努力をしてこの宝華高校の受験に受かることができた。

「楽しみだなー」

9年間。ずっと一緒の友達と別れ、こんな都会にまできてしまった。

駅のホームを降りる。

「大きい、、」

遠くからも見えるその高校。

誰もが1度は憧れるその高校に俺は入るのだ。

新たな出会い、、もしかしたら恋なんてのもあるかもしれない。

そのような期待を胸にバスに乗り込む。

今見ているだけでも宝華の学生はちらほらいる。

俺は横の学生をじっと見た。

もしかしたら話しかけてくれるかも、、と。

小学校の頃は話しかけてくれて、仲良くなることができた、、

が今回は失敗した。

スマホを見ているとあっという間についた。

たくさんの人が降りていく。

最後にバスを降りる。

「改めてでかい、、」

見上げなければ見えない時計塔。

数えられないほどたくさんある校舎、、

食堂、、図書室、、

ついに高校生活が始まる。

まずは初めの一歩を踏み、、、

空中で足が止まった。

俺だけでなく、全員がその1人の女子学生を見ている。

黒髪をたなびかせ、美しい。

そんな姿に見惚れ、、いや恋をした。

その1歩はその学生が校舎に入り見えなくなるまで踏み出すことはできなかった。

まさに一目惚れである。

***

俺は 竹波 健斗 と言う。

何をしているかって、、?

ぺらっ、、

本を読んでいる。

「ざわざわ。」

あの後自己紹介を終えて賑わっている教室。

特にこのクラスが一番盛り上がっていると思う。

なぜならあの、一目惚れした高嶺の花、永倉 宝華がいるからだ。

「永倉さん!」

男子だけでなく、女子の心までも1日で掻っ攫っていった彼女はクラスの中心だ。

だがそれに入ることなく、僕は誰かに話しかけられるのを待って本を読んでいる。

最近流行っているラノベ。

1人ぐらい話しかけてくれるんじゃないかと期待したがそんなことは無かった。

気づけば彼女を目で追ってしまっている。

「そうだね!」

休憩時間は社交的で全員と明るく喋り、

「3ルート6です。」

授業では切り替えて、しっかり聴き、発言する。

そんな完璧な彼女を知らぬものはもうこの学校にいない。

***

あれから1ヶ月。

「おう!健斗!」

「おう!宗一郎!」

ようやく1人友達ができた。

あの作戦がようやく成功したのだ。

「それ〜だよね!」

と喋りかけられたのがきっかけだ。

「おおい!宗一郎!」

挨拶をした後すぐに別の友達のところに行ってしまった。

彼はこのクラスの人気者の1人である。

そしてまたボッチにへとなる。

***

また1ヶ月。

「おはよう!春人!」

「おはよう!健斗!」

次はちゃんとした友達ができた。

名前は笹川 春人

「このラノベがね!」

「いいよなそれ!」

話が合う。いつまでも話せそうだ。

「じゃあそれ買ってみようかな。」

そしてある日春人にお勧めされた物を買いに出かけた。

「あ、、」

そして会ってしまった。

永倉さんに。

しかも1人。

もし仲良くしたいのなら、絶対に逃してはならないチャンス、、、

でも俺みたいなんかが話したら。。

「あいつがさ、、永倉さんと、、」

広められるかもしれない。

「うざいわ。あんなインキャ話すな。」

他の人に罵倒されるかもしれない。

もしかしたらいじめられるかもしれない。

そんな事はないのに、クラスメイトは優しいとわかっているのに、、

そんな考えが頭の中をよぎった。

違うところにしよう。

そして離れた。

「あ!竹波くん!おはよう。」

その瞬間。満面の笑顔でそう言われた。

答えなくてはならない。

「はぁはぁ、、」

でも気づいたら逃げていた。

***

そして3ヶ月が経過。

もう2学期。

色んな人と喋る機会が増えてきた。

「一緒に帰ろうぜ。」

そう言われた時俺は戸惑った。

「すまん。春人と約束してて、、」

最初は友達を作るために読んでいた小説。

だが気づけばハマっていた。

時が経っても俺が一番話しが合うのは春人なのである。

「そうか、、すまんな。」

正直に言えば少し刺激が欲しくなっていた。

春人は基本的に本を読んでいた。だから俺は。。

「一緒に遊ぼうぜ!」

そう言われた時、春人を誘いはしなかった。

だんだん変わってくる、、

あの時は一番春人と仲が良かったのに、、

「なぁカラオケ行こうぜ!」

その日、一緒に本を読む約束をしていた。

だがその時俺は、

「おう!」

そう、答えてしまった。

結局俺はそちらを優先した。

それが頭にずっと残って、、謝れなくて、、

「あはは、、」

話せなくなった。

怖かった。

***

1ヶ月。

俺は友達と一緒に遊び、

春人はチラチラとこちらを見ながら最近流行りの本を読んでいる。

昔の俺のようだ。

誰か俺に話しかけてくれ、と心で叫んでいた、、

気持ちは一番わかっている、、わかっているけど、

「行こうぜ!」

あの事が気がかりとなり喋れなかった。

放課後。

俺は初めて永倉さんと掃除の当番が被る。

仕事する場所は違うのでずっと離れていた、

だが最後教室の掃除だけは一緒だった。

「ねぇねぇ。」

話しかけられる。ドキッとする。

「笹川くんと最近どうしたの?」

モヤっとした。

なんで自分たちの関係に入ってくるんだ?と

「あっ、、ごめ、、」

タタタッ!

走り出した。

心配していったのはわかっていても、、

***

その日の夜。

ずっと考える。

そんな事はわかっている。

きっと許してくれる、、だって春人は優しいから。

そう考える自分もなんだか嫌だった。

話したいと言う気持ちは変わっていない。

ただそう言うをいるだけ、、

タイミングを待つ?

待つ、、待つ?

入学当初に比べて性格が明るく、社交的になった。

良くなった。面白くなった。

そう思っていた。

あの頃を思い出す。

誰かに話しかけてもらえるのを待っている、そのタイミングを待っている。

その時感じた。

「俺は何も変わっていない、、!」

挑戦せずに、ずっとタイミングを、待つ。

それはいつまでも

一歩を、、

高校に入る時の一歩を

「まだ踏み出せていない。」

惨めになった。

母に気づかれないように小さく泣いた。泣いた。泣いた。

***

1日。

「眠そうだな。」

そう友達に言われた。

「おう、、」

もう逃げない。

決めたのだから。

遅いかもしれない、、それでも

「おはよう、、!」

と声をかける。

何ヶ月ぶりだろうか。何ヶ月逃げていたのだろうか、、

「!おは、、よう!健斗!」

それは今、ようやく、少し踏み出せた。

「どうしたの?眠そうだよ!」

「そうなんだよ!徹夜してな!それよりも小説のことを喋ろうぜ。」

「うん!」

戻った。最初の関係に。

***

感謝を伝えたい。

そう思った。

でも

、、、

ダメだった。

少し踏み出せただけで、まだ着地していない、、

***

1月。

他の友達とも、春ともたくさん話し、たくさん遊んだ。

でもまだ自分からあの人に話しかけた事はない。

もうクラスが変わったら本当に話しかける事はできないかもしれない。

わかっていてもなかなか言えなかった。

こんにちは や ありがとう が。

そしてその日、、

またこの図書室に、、

少し、踏み出そうとあの時逃げ出してしまったあの本屋に来ていた。

もしかしたら、、と思って。

「あっ、、」

なの偶然か、奇跡的に彼女はそこにいた。

「、、、」

今がチャンスである。

本屋をうろちょろと歩く。

側から見ればヤバいやつである。

「深呼吸、、」

ふぅ、、

もういける。

誰もいない。話せる。

歩く。早歩き、

「あ!竹波くん!」

「あ、、」

「?」

「あり、、」

「アリがどうしたの?」

「あの時言ってくれてありがと、、う。」

言えた。とんでもない達成感。

「ああ!あの時はごめんね。無責任で。」

「ううん。気づけたから。」

「?」

「本当にありがとう!」

そして俺は早歩きでその場を去った。

***

あれから1ヶ月ちょっと、、

もうすぐ2年生になる。

あれ以来喋っていない。あの時は奇跡であった。

そんな奇跡が起こらなければなにもできなかった。

「このラノベが、、、どうしたの?」

朝早く来て、喋っていると悩んでいる俺を心配したのか聞いてくる。

「いや、、ちょっと恥ずかしくて話しかけられなくてな。」

「?」

「いや大丈夫だ。」

ギュ。

手を握られる。

「どうした?」

「健斗くんの恋が実りますように。」

「違うわ!」

「でもそう言う顔だったよ。」

「は、、はぁ?」

「あれでしょ。永倉さんでしょ!」

こいつ、、ピンポイントに、

「なんで、、」

「僕は君のいちばんの友達だからね!」

「くっ、、」

「そしてもう一つ。うっふん。」

と少し声を低くして、

「俺なんかが話しかけたら、、なんて思ってるんでしょ!」

「、、」

「大丈夫大丈夫!そんな人いないから。」

わかっている。1年間接してきてそんな人はいなかった。

正直わかっている。そんな事を理由にして話しかけれないことなんて。

「大丈夫だから。君が優しい事は知っているはずだよ。向こうも。文化祭も、体育祭も。君は輝いてた。」

「、、恥ずい、、」

「大丈夫、それ以上に永倉さんが輝いてるから。」

「その一言いらねぇよ!」

「まあまあ。まぁ見てるって事。」

肩を組み。

「頑張りたまえ。」

そして教室を出ていった。

「おはよう!」

と永倉さんが教室に入ってくる。

、、、この1年大変だった。

と振り返る。

「大丈夫だから。」

と春人の言葉が思い出される。

何かに押されるように席を立ち上がる。

自分はここに入ってから成長している物だと信じてずっとやってきた。

でもそれは違って、、、

「大丈夫。」

でもいい友達もいる。

自分のことを信じてくれている。

、、、

まずは初めの1歩を、、

近づく。

それに伴って心臓がなる。

緊張。でも引き返せない。

もう行くと決めたのだから。

ようやく、ようやく、

たくさんの人が集まる、永倉さんのもとに行く。

最初の言葉、たった4文字の

スゥ、、

「こんにちは!永倉さん!」




こんにちは新しい僕。

1年かけてその1歩を踏んだ。

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