第4話
彼女はずっと都会で頑張ってるらしい。
もちろんヤツも。
知るつもりがなくても、おかんが勝手に話し掛けて来る。
そして彼女の話をする時には決まって「早くあんたなんかの事忘れて幸せになってくれたら良いのにねえ」で締めくくる。
激しく同意だ。
田舎の時間は都会とは違って少しだけのんびり流れてるように感じる。
といっても半端な田舎だってちょっとずつ変わって来てる。
もう夏の夕立ちなんて風情はなくて豪雨だ。
都会のゲリラほどではないにしろ、ちょくちょく排水が追い付かなくて道路がヤバい事になる。
打ち水や扇風機で凌げてた夜はなくなり、どこの家も閉め切って冷房。
おかげで蚊取り線香の香りが漂って来る事もなくなってしまった。
熱中症対策なのか、子供たちが外で走り回る事もほとんどない。
変わって行く街並み。
変わって行く景色。
変わって行く俺たち……いや。
本当に変わってしまったんだろうか。
変わったのは俺だったのか、彼女だったのか。
「ねえ何考えてるの?思ってる事ちゃんと言ってよ」
何度彼女から言われただろう。
生まれた時からずっと一緒だった。
だから「言わなくてもわかるだろ」って思ってた。
言わなくても通じてるもんだと信じてた。
そんなわけなかったのに。
もっと出来る事はあったに違いない。
若すぎた、で終わらせるにはあまりにも……彼女が可哀想すぎる。
「もう、終わりにしよう」
普段、ロクに喋りもしないクセに何でその言葉だけはハッキリと言ってしまったんだろう。
見開かれた彼女の目だってそう語ってた。
お互いうんざりしてると思ってた。
もう終わりにするしかないって思ってた。
彼女もそう望んでると思ってた。
だから―――
ねえ 私ヒグラシの鳴き声 大好きなの
そういえばその理由を俺は知らない―――
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