第18話 他人を許すこととその効果
他人との関係の中で、怒りやわだかまりを抱えたことがある人は多いと思います。私自身も、過去の出来事や心ない言葉に対して、長い間許せない気持ちを抱えていました。特に、パーソナリティ障害を抱えている私にとって、他人の行動が自分にとって大きな傷となり、その記憶が何度も頭をよぎることがありました。
しかし、「許す」という選択肢を知り、それを少しずつ実践することで、自分自身が軽くなる感覚を覚えました。他人を許すことは、その相手のためだけではなく、自分のためでもあるのだと気づいたのです。
許せないという感情の正体
誰かに傷つけられたとき、「なぜこんなことをされたのか」「どうして自分だけがこんな目にあうのか」という思いが、心の中に強く残ります。その感情が膨らむと、相手を憎んだり、心の中で何度も過去の場面を繰り返すようになります。
私の場合、過去に無視されたり、攻撃的な言葉を浴びせられた経験が、長い間許せない思いとなって残りました。その記憶を思い出すたびに、心がざわつき、怒りや悲しみが蘇ります。
けれども、その感情にずっと囚われていると、相手以上に自分が疲れてしまうことに気づきました。相手を許せないという気持ちは、実は自分自身を縛りつけていることが多いのです。
他人を許すことの意味
許すという行為は、相手を正当化するわけではありません。それは、「自分の中の怒りやわだかまりを手放す」という選択です。許すことによって、相手との過去の出来事に囚われる時間を減らし、心に余裕を作ることができます。
私が「許す」ことに向き合ったとき、次のことを意識しました。
1. 許しは相手のためではなく、自分のためである
許すことで得られる最大の恩恵は、実は自分自身の心の平穏です。許せない気持ちを抱えていると、その感情が自分の中に居座り、心を疲れさせます。許しは、その重荷を下ろすための行為なのです。
2. 許しは過去を忘れることではない
許すということは、過去を完全に忘れることではありません。それは、「この出来事は確かに起きたけれど、もうこれ以上自分を苦しめない」と決めることです。私は過去の経験を否定せず、「それも自分の人生の一部」として受け入れるようにしました。
3. 許しには時間がかかる
許しは一瞬でできるものではありません。私は、何度も心の中で「あの出来事を手放そう」と言い聞かせることで、少しずつ相手に対する怒りを和らげていきました。
許しがもたらす効果
他人を許すことには、さまざまな効果があります。私が感じた変化をいくつか挙げてみます。
• 心の平穏が得られる
許せなかった頃、私はその感情に囚われて他のことに集中できませんでした。けれども、許しを選んだことで、心の中にスペースが生まれ、穏やかな気持ちが増えていきました。
• 人間関係が柔軟になる
許せなかった相手に対しても、少しずつ距離を取って関係を修復することができました。また、許しを経験したことで、他の人との関係でも柔軟に対応できるようになりました。
• 自分自身をも許せるようになる
他人を許すプロセスの中で、自分にも「不完全さ」を許す余裕が生まれました。他人の過ちを受け入れることで、自分自身の失敗にも優しくなれるのです。
許しのプロセスを始めるには
許しを始めるには、まず「許してみよう」と決めることが大切です。そのためには、以下の問いを自分に投げかけてみてください:
• 許せない気持ちを抱え続けることで、自分にどんな影響があるのか?
• 許すことで、どんな変化が期待できるのか?
• 許しは自分にどんな自由をもたらしてくれるのか?
これらの問いを考えることで、許しの第一歩を踏み出す準備ができます。
最後に
他人を許すことは簡単ではありませんが、それが自分の心に大きな平穏をもたらしてくれるのは間違いありません。許しは、相手のためではなく、自分自身のための選択です。心の中の怒りやわだかまりを手放すことで、もっと軽やかに生きられるようになるはずです。
次回は、「自分の感情をコントロールする方法」について考えていきます。怒りや不安、孤独といった感情とどう向き合い、それらを自分の味方にするのかを探っていきます。
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