発展の価値
「其方達もより良き未来を掴むため、彼の店を利用してほしい」
コーラルの王は国民に対し、質屋の利用を解放しました。
解放するに当たって臣下達と規範書を作成しました。
規範書には質屋をどのように利用すればいいかをまとめたものです。それには効率的な利用方法や質屋を利用した新しい産業の提言が記されていました。
その規範書を公示し、字が読めない者向けに質屋の利用方法について相談に乗ってくれる人員も配置しました。
これに対し、神殿の神官達は反発しました。
信仰心の薄い王の手柄を――神のおかげとし――信心を神殿に集めるはずが王にピシャリと否定されたうえに、新しい力を広めようとしている事に反発しました。
ただ、神官達の言葉はあまり意味を持たなくなっていました。民衆は王の持つ力への憧れを強く持ち始めていたため、次々と質屋の利用を始めていきました。
「神官達は、今度は
「つい先日まで私は『邪神』と言われていた覚えが……」
「この流れは止められないと考え、其方を抱え込もうとしているのだろう」
風見鶏のように発言を変える神官達を思いだし、王は苦笑しました。
「だから昨日、神官様が足を運んできたのですねぇ」
「奴らの頼みを聞いてやるのか?」
「いえ、『宗教の勧誘なら結構です』と返しました」
店主の言葉を聞いた王は快活に笑いました。
ただ、直ぐに笑みを消して問いました。
「だが実際、其方は神の類いだろう? 神殿と組んだ方が何かと動きやすいのではないか? 代行者などではなく、神そのものとして成り代わる事も――」
「
「本当にそうか? そのわりには好き勝手をやっているようだが」
王が質屋の利用を勧めた事による弊害も確かに生まれました。質屋から異能を手に入れ、王の暗殺をたくらむどころか別の犯罪行為に活かそうとする者達すら現れたのです。
王はそうなる可能性がわかっていたため、臣下達の力も借りました。
臣下達は王の要請に即応し、質屋で新しい力を手に入れて犯罪の摘発を厳しく行いました。それで全てが解決したわけではありませんが、国は爆発的な成長を始めていきました。
周辺諸国はコーラルの異常な成長を危険視しました。異形まで闊歩するコーラルに恐怖しました。そこで連合を組んでコーラル王国に攻め入ろうとしました。
ただ、それは王にとって好都合な話でした。
「先に攻めてきたのは其方達だ」
怪物と化した王と臣下達の前では、連合軍はまるで相手になりませんでした。
攻め入ってしまった事でコーラル王国に戦争の大義名分を与えてしまい、多くの富を奪われる事になりました。
ただ、コーラルの王は領土に関しては多く切り取ろうとしませんでした。多少は切り取ったものの、ほどほどのところでやめておきました。
「過剰に土地があっても困る。要所だけ押さえておけばよい」
王は戦略上の要所だけではなく、痩せた土地もあえて選びました。
周辺諸国は密かにそれを馬鹿にしました。痩せた土地に豊富な資源が眠っている事を知らないまま、コーラルの王を愚かだと言いました。何を言ったところで彼らが負けた事実は覆りませんでした。
向かうところ敵無しのコーラル王国でしたが、問題は次々と生まれてきました。王と臣下達はそれに粛々と対処し、国民の支持を集めていきましたが……王は自分の働きを「十分ではない」と考えていました。
臣下達はとてもよくやってくれている。
然れど、
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