第4話
お母さんはよく、自分が高校時代にどれだけ人気者だったか話してた。
「私ね、すごく可愛くて、彼氏もたくさんいたのよ」って。
それだけじゃなくて、「テストも全部満点で、成績も優秀だったの」って。
そして、いつもこう言うんだよね。
「あなたも私みたいになりなさい」って。
でも、そんな話を聞いても、なんだかモヤモヤした気持ちになるんだ。
お母さんは私をバレエやギターのクラスに通わせてくれた。
理由を聞いたら、「自分が子どものころにできなかったから」って。
それを聞いて、「お母さんのために頑張らなきゃ」って思った。
でも、だんだん自分の好きなことが見えてきて、本当にやりたかったのは空手だったんだよね。
でも、親にそれを言った記憶はないし、言う勇気もなかった。
なんとなく、言ったらどう反応されるか想像がついたから。
私はずっとゲームや「男の子っぽいこと」に興味があった。
でも、お父さんには「それは女の子がやることじゃない」って言われた。
子どものころ、親の言うことをよく聞く子だったから、一度言われたら次からは気をつけるようにしてたんだよね。
だから、「空手」は男の子っぽいこと=女の子には許されないこと。
そう思って、諦めたんだ。
小学生のころ、私は「Gaiaonline」っていうサイトにハマってた。
アニメや漫画が好きな人たちのためのフォーラムサイトで、自分のキャラクターをドレスアップさせたり、世界中の人とチャットできる場所だった。
クラスメートもアカウントを持ってて、そこから興味を持ったんだ。
今思えば、これが私の「ネット中毒」の始まりだったのかもね。笑
Gaiaでは、自分が好きなキャラクターになりきれる場所だった。
ロールプレイのフォーラムに参加して、自分の作ったキャラで遊ぶのが大好きだった。
毎日ログインしては、何時間もフォーラムに書き込んでたんだ。
8歳のときには、フォーラムの投稿を可愛く装飾する簡単なコードの使い方も覚えちゃってた。
当時の私にとって、それはすごく新鮮でワクワクする世界だったんだよね。
そこで出会ったティーンエイジャーのシュングとテスは、私の親友になった。
シュングはお姉さんみたいな存在で、私のちょっとしたイタズラにも笑ってくれて、ずっと話していられる人だった。
テスはギターが好きで、日本のロックをよく聴いてた。特に「Plastic Tree」が大好きだったみたい。
彼らのおかげで、初めて「頼れる人」がいるって感じられたんだ。
サイトには「シアター」って機能があって、そこでYouTubeの動画をみんなで一緒に観られたんだ。
そこで初めて「アニメ」に出会った。
当時の私にとって、アニメは未知の世界だった。
アメリカでは、アニメも普通の「カートゥーン」って呼んでたからね。
唯一知ってたのは、叔父のジョーと一緒に観た「ドラゴンボールZ」くらいだった。
でも、そのとき観たのは「しゅごキャラ!」の第1話。
もうびっくりしたよ。アメリカにはない、あの可愛さ。
その後、フォーラムで出会った人たちが「J-pop」やアイドルグループを教えてくれた。
それで日本のアイドル文化にハマっちゃって、それからは日本の音楽しか聴かなくなった。
これをきっかけに、私の中で少しずつ自分の「好き」が形になっていった気がする。
でも、2000年代初期は、アニメやカートゥーンが好きってだけで「オタク」とか「変人」扱いされたんだよね。
Gaiaで仲良くなった人がいたけど、私のプロフィールページにアニメの画像がいっぱい貼ってあるのを見て、
「アニメ嫌いだから、君とは友達になれない」って言われてブロックされたことがあった。
幼い心には、それがすごくショックだった。
アニメが好きって、そんなに悪いことなのかな?
空手がやりたい、アニメが好き。
これって、そんなに悪いこと?
それ以来、自分の好きなことはあまりオープンにできなくなっちゃったんだよね。
「星の子」 うさは @usaha
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。「星の子」の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます