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「未成年者略取」
「あ?」
「なに他人さまの子、連れまわしてんだよ」
向ヶ丘工業高校生徒指導室。
喫煙指導真っ最中。
目の前には小学生のガキ…
「オレはおまえをロリコン変態に育てた覚えはねぇんだよ!」
…じゃなくて、生活指導部 梅ちゃん。
小学生みたいな顔でオレを睨み上げてくるけどなんの迫力もない。が、かわりに赤ペンがとんでくる。ちょっとまって暴力反対。
「ぶぶぶぶぅ!」
チビまでマネして鉛筆とばしてくる。ほら見ろオレのかわいいベイベが悪い子に育っちまうだろ!
梅ちゃんのお膝でご機嫌なのは『雪』、天使みたいなオレのベイベ。ポッキー食いちらかしながら算数プリントに電車のイラストを描いて得意気だ。
「なぁユキちゃん」なんて梅ちゃんに抱っこされてさらにご満悦。どさくさに紛れて胸の谷間に頬擦りしてやがるまったくだれに似たんだろうな。
「ユキちゃん、かわいそうだ。きょうはオレんちでねんねしような」
「あぁあああ!」
おい! おいおい!
「ちょっとまってよ、他人さまじゃねぇよ。オレのチビだ、オレが拾ったんだ」
「ひろっ、…おまえ…他人さまの子を気安く拾うなよっ!」
「ぶぶぅ!」
って、こんどはボールペンとクレヨンがとんでくる。ほんとまって体罰反対。
「だって落ちてたんだもんよ!」
そう。
この愛しのチビは、ある雪の日、オレの部屋に落ちていたのだ。
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