風音

第6話

フルムーンがでている。



風音は、大きな窓の外を見ていた。雲ひとつとない空に、満月だけが輝いていた。その光が眩さに、星はダストのようにうっすらと舞っている。白い光に照らしだされたベンチは、うすく光をはなっているように見える。



そこは、一階にあるリュウの部屋だった。蒼井家のハウスは、家全体に太陽の光が入るように建てられていた。当然、夜でも光は入ってくる。風音はそのやわらかい光を見ていた。繁華街からすこし離れたここは、夜になれば世界に誰もいないのかと思うくらい静かなところだった。風音が安らぎを感じられる唯一の場所である。




風音は身体をおこすとリュウのいるベットへと足を進めた。リュウは身体にタオルをかけて、眠っている。そこからは筋肉のついた上半身がのぞいていた。寝る前に、暑いからと上半身だけ裸になってベットに入ったのだ。それでも暑いのか、リュウの胸はすこし湿っていた。



風音はタオルをひっぱると、ベットの真ん中で堂々と眠るリュウの隣にころがった。向き合うようになったリュウの顔をじっとみつめる。二重の目は大きく形がよく、鼻筋はすらっとしている。ほくろはない。整ったリュウの顔には、傷さえなかった。

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