Intermission(休憩)
No.7
森羅さんにつれて来られたのは、隣町の高級焼肉店だった。
「え、来たかった場所ってここですか……?」
「はい。わたし、焼肉大好きなんですけど、あまり胃が強くなくて。いつもあまり食べられないんです。でも、今日なら思う存分食べられるかな、と」
「成る程……」
……いや、成る程なのか?
「ほら、早く行きましょう。支払いはわたしのEXtENDからしていただいて構いませんから」
「は、はあ……」
ついさっきまで事件を解決するために動いてたんじゃなかったっけ?
そう思いながらも、森羅さんに続いて焼肉店の中に入る。
「いらっしゃいませ、2名様でしょうか?」
恐らく、誰かと入れ替わっているであろう店員が、至って普通の対応でオレ達を迎え入れてくれる。カフェでも思ったが、こういった異常なまでの真面目さは、我が国特有のものなのだろうか。
「2名です」
「かしこまりました。それでは、こちらへどうぞ」
2人用の席に通され、おしぼりと水を渡される。
「細田さんは何か食べたいものありますか?」
森羅さんは、店側から自動共有されたメニューを空中ディスプレイで見ながら聞いて来た。
「ては、ライス小だけ。お肉は森羅さんにお任せします」
「了解です」
そう言うと、森羅さんはライスの大と小、チョレギサラダ、そしてかなりの量と種類の肉を注文し始めた。
オレの身体とは言え、あんなに食べられるのだろうか。
「そう言えば、細田さんは白井ロボティクスの入社を目指してたんですよね。どうしてあの会社を狙っていたんですか?」
注文し終わって暇になったのだろう、森羅さんはそんなことを聞いて来た。恐らく、益田さんが情報を流したに違いない。
「うーん。白井ロボティクスって、知らない人はいない超有名企業じゃないですか。だから、バカな俺でも、そこに入れたら自信が持てると思って」
「お金のため、じゃないんですね」
森羅さんの言葉に、オレは苦笑した。
「勿論、お金のためでもありますよ。お金がなければ生活出来ませんしね」
「確かにそうですね。ちなみに、白井ロボティクスに入れなかったらどうするんですか?」
「その時はその時でまた考えますよ。一度に何個も考えると、一つ一つが疎かになりそうなので」
「そうですか。それなら、入れなかった時はうちで雇ってあげますよ」
「え、いいんですか?」
「ええ。勿論、それなりにこき使わせてもらいますけど」
そう言って、森羅さんは楽しそうに笑った。
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