謎の指示


(2)


 私はウイ君の家を出た後、すぐにオルニスを装着し、三日前の世界に跳んだ。


 しかし、何度やっても、どんなやり方を試しても、誰か……いや、世界そのものが邪魔しているのか、ウイ君の死をなかったことにすることは出来なかった。


「どうして……どうして変えられないのよ……!」


 


 だから、オリジナルであるウイ君の方が優先されているのか?


「…………」


 いや。


 いや、それはおかしい。


 そもそも、オリジナルの方が優先されるというのであれば、私が見る未来もオリジナルに準拠しているはずだ。


 そうでなければ、ラプラスの不変性の法則が崩れてしまうではないか。


「……と言うことは、絶対にあるはずなのよ……ウイ君が見た映像も、私が見た映像も、どちらも両立出来る方法が……」


 考えろ、考えろ、考えろ。


 脳細胞が焼き切れるまで、頭を回転させろ――


「……チャット?」


 K.Sという送り主からEXtENDに送られてきた文面が、空中ディスプレイに映し出される。



『彼を運命の呪縛から解き放ちたければ、この場所に行け』



 文章の下には、どこかの本屋を目的地とした地図が表示されていた。


「…………」


 どうやら、このチャットの送り主は、私の今の状況を知っているらしい。


 知った上で、ウイ君を死の運命から解き放つことが出来ると、そう言っているのだ。


「……行くしかない、か」


 どこの誰かも分からない人間の指示に従うのは癪だが、打つ手が何もない今、従う他に方法はないだろう。


 私はオルニスの装備を解除し、すぐに家を出た。

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