過去改変


 ステージ0?


 時間跳躍特有の浮遊感から解放されると、目の前には驚いた表情のキイさんが立っていた。


「私、じゃないわね……?」


 キイさんの警戒心を解くために、オルニスのバイザーを上げて顔を見せる。


「キイさん、僕です。ウイです」


「ウイ君? 一体、どのタイムラインからここに……?」


「1年後から来ました」


 僕がそう答えると、キイさんの表情に陰りが見えた。


「未来……と言うことは、1年後の世界で何かあったのね……?」


「どうして、未来の世界で何かあったと思うんですか……?」


「何もないのにウイ君が過去に跳ぶとは思えないし、それに、私が理由もなくオルニスを貸し出すわけがないもの」


「成る程……」


「それで、1年後の世界では今、何が起きているの?」


「実は――」


 僕はオルニスによる未来改変が原因で、人々の精神と身体が入れ替わる事件が発生していることをキイさんに伝えた。


 勿論、僕のラプラスが関わっていることは、意図的に省いて。


「成る程……つまり、ウイ君はオルニスの使用を阻止しに来た。そういうことね?」


「はい。出来ることなら、今日中にオルニスを使用出来ない状態にしてください。世界を元に戻すにはそれしかありません」


 キイさんは少し思案した後、「分かったわ」と言った。


「この後第二研究室を施錠して、オルニスは使えないようにしておくわ」


「ありがとうございます。あ、それと、僕にラプラスを使わせないようにしてくれますか? 後遺症の頭痛が最近酷くて……」


「分かったわ。ラプラスの研究も、先週ので最後にするわ」


「ありがとうございます。それじゃ、僕はそろそろ元のタイムラインに戻りますね」


「ええ、それじゃ。またね、ウイ君」


 小さく手を振るキイさんをしっかりと目に焼き付けてから、僕は「ジャンプ」と呟いた。

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