時獄の沙汰も時次第〜時は金なりとは言いますが〜

原因

　ステージⅢ　②

　キイさんの家から自宅に戻った僕は、熱めのシャワーを浴びた後、ベッドの上に大の字で寝転がった。

「…………」

　天井を見詰めたまま考えを巡らせる。

　どうすれば、入れ替わり現象を終わらせ、皆や勇人を元に戻すことが出来る？

　そもそも、入れ替わり現象が起きたのは、何が原因なんだ？

　ニュースの情報によると確か、入れ替わり現象が起こったのは昨日の夜中、ちょうど僕が寝付いた頃だ。

　そして、入れ替わりは完全にランダムで起きており、２人の対象者が相互で入れ替わるとは限らないし、僕やキイさんのように入れ替わりが発生していない人達もいる。

「……そうだ」

　一つの妙案が突如頭に浮かび上がり、僕はベッドから身体を起こした。

「僕にはあれがあるじゃないか」

　僕はベッドから下り、自室を出た。

　そして、キッチンに向かい、シェイカーを取り出す。その中に、マルトデキストリンを５０ｇ投入し、水を加えてシェイクする。

　勿論、目的は糖質の摂取ではない。

　ラプラスの発動――未来を見ることだ。

　不幸中の幸いと言うべきか、ラプラスを使って特定の未来を意図的に見ることは出来ないが、使用回数の制限はない。

　つまり、僕が見たいと思うシーンが、この入れ替わり現象の解決に繋がる映像が流れるまで、何度だって繰り返すことが出来るというわけだ。

　勿論、身体への負担は免れないだろう。最悪、途中で倒れてしまう可能性だってある。

　それでも、この世界や親友がおかしいままであり続けるよりは遥かにマシだ。

「……よし」

　僕はシェイカーを持ったまま自室に戻り、ベッドに腰掛けた。

　そして、甘ったるい液体を、胃の中へ一気に流し込む。

　求める未来（答え）を見るために。

　ステージⅢ－α　①

　テーブルの向こう側には、観念したような表情のキイさんが座っていた。

「……答えてください、キイさん。今回の一件、原因は僕達が行った未来改変にあるんですよね……？」

　未来の僕がそう問い詰めると、キイさんは「……ええ」と漏らした。

「今回の一件は、ラプラスとオルニスの併用に原因があると見て間違いないでしょうね」

　そんなキイさんの告白に対して、未来の僕は「やはり、そうでしたか……」と呟いた。