灯台下暗し


 ●◯●


 気が付くと、俺は自宅のリビングで大好物のアップルパイを食べていた。


「運命が変わった……? でも、どうして……俺が殺されたのは過去じゃなかったのに……」


 俺がそう呟いた瞬間、リビングの扉がガチャリと開き、ヴィーナが現れた。


 そして、彼女の大きな目から、ポロポロと涙が溢れ出す。


「太陽……太陽っ!」


 ヴィーナが、俺の胸に飛び込んで来る。


「良かった……本当に良かった……!」


「……もしかしてヴィーナ、お前が俺の運命を変えてくれたのか……?」


 俺の問い掛けに対して、ヴィーナは頭を縦に振った。


「太陽、出掛けたきり帰って来ないから……心配になって、それで……っ」


「…………」


 ああ。


 俺はなんて馬鹿だったんだ。


 俺のことをこんなにも心配してくれる人間が傍にいてくれていることに、そのありがたみに、どうして気付かなかったのだろう。


「ヴィーナ……本当に、すまなかった……」


 これからは、ヴィーナを悲しませるようなことだけはしないようにしよう。


 そんなことを考えながら、今ここにいられることの尊さを噛み締めながら、俺はヴィーナが泣き止むまで彼女のことを抱き締め続けた。


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