打開策


 ●◯●


 気付いたら、チョコの掛かったドーナッツを口に運ぼうとしていた。


 テーブルを挟んだ向かい側には、ハムスターのように口の中をいっぱいにしたヴィーナが座っている。


「おーいあお、あいおう?」


 どうしたの、太陽? と言ったのだろう。こいつは、口に食べ物が入っている時は喋るなと教わらなかったのだろうか。


「……なんでもない」


 恐らく、前回と同じく、俺の事故死を知ったデフォルトの俺がタイムホールの使用を控えたことで、俺の人生が上書きされたのだろう。


 それにしても、まさか片庭さんの救出をああいった形で妨害してくるとは。運命というのは、想像以上に粘着質なようだ。


 俺は手に持っていたドーナッツを口に突っ込み、アイスコーヒーを飲み干した。


「ヴィーナ、これから白井のところに向かうぞ」


「キイのところ? 何しに行くの?」


 俺はヴィーナの問い掛けに対して、にっと笑った。


「勿論、打開策を手に入れに、だ」

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