鍵
●●◯
タイムホールから吐き出された俺は何故か、テスト君にお姫様抱っこされていた。
「……意外と力持ちなんだな」
「一般的な成人男性の10倍の筋力設定で作られておりますので」
「成る程、それは心強い」
テスト君の腕から降り、隣の部屋に移動すると、そこには並行世界のテスト君か立っていた。
「悪いが、この世界の真中太陽を呼んでくれ」
「承知いたしました! ………………5分ほどで来るそうなので、少々お待ちください」
それから5分ほど待っていると、研究室の扉が開き、筋肉隆々の身体と顔がアンバランスな俺が入って来た。
「その様子だと、俺のことは既に知っているようだな。俺にその記憶はないが」
「ああ。お前が新垣勇人の救出に何度も失敗していることも、同じ世界の過去に跳ぶ方法を知っていることもな」
「成る程。つまり君は自分の世界に繋がるタイムホールを俺に出してもらうためにここに来たわけか」
「そうだ。悪いが、9月4日の10時25分に繋いでくれ」
「それは構わないが、何をする気だ?」
「勿論、証明しに行くんだよ。人の死は覆せるってことをな」
俺がそう言うと、筋肉は目を大きく見開いた。
「……まさか、見付けたのか? 鎖を断ち切る方法を……?」
「ああ――」
俺は、タイムホールで過去に跳んだ自分が、過去の世界で殺されたこと。その死体をデフォルトの自分が発見し、過去に跳ぶのを止めたことにより運命が変わったことを筋肉に伝えた。
「――だから、死は覆せるはずなんだ。そして、その鍵は、タイムホールを使用したことがあるかどうかだと俺は考えている」
「成る程……確かに、新垣をタイムホールに入れたことはないな。試してみる価値はあるかも知れない」
そう言うと、筋肉は機械を操作し、隣の部屋にタイムホールを生成した。出口は、俺が先程伝えた9月4日の10時25分に設定されているはずだ。
「行くぞ、テスト君」
「承知いたしました!」
俺と俺が連れて来たテスト君は、再び真っ黒なタイムホールに自らの身を投じた。
今度こそ成功するはずだと、そう信じて。
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