復活


 ●◯●


 気付いた時には、そこは自宅のリビングだった。


「どういうことだ……俺はあの女に殺されたはずじゃ……」


 今でも、頭に、身体に、殺された時の記憶が鮮明に刻まれている。あれが夢ではないことは自信を持って断言出来る。


 確かめなくては。


 そう思ってソファーから立ち上がった瞬間、リビングにヴィーナが入って来た。


「どうしたの、太陽。顔、怖いよ……?」


 俺は訝しむヴィーナの肩を両手で掴んだ。


「……今は何月何日の何時だ?」


「9月5日の13時過ぎだけど……もしかして太陽、が……?」


 ヴィーナの言葉に、俺は思わず息を呑んだ。


「どうしてお前がそのことを……?」


「やっぱりそっか……説明するから、取り敢えず座って」


 俺が座った隣に、ヴィーナも腰を下ろす。


「昨日――9月4日の11時過ぎ、太陽はを装着した自分の死体を発見したの。太陽はその瞬間、死んでいるのが未来から来た自分だと理解して、タイムホールの使用を暫く控えることに決めた。過去に跳ばなければ、殺されることもないと判断してね」


「成る程……過去に跳ぶことを止めたから、あの女に殺された事実自体がなかったことになったのか……いや、ちょっと待てよ。それって、運命が変わったってことだよな……?」


「そうなるね。太陽はこうして生きてるわけだし」


「…………」


 確かに、俺はこうして生きている。


 筋肉は、何度繰り返しても新垣を助けることが出来なかったと言っていたのに、どうして俺は助かったんだ……?


 俺と並行世界の新垣に何の差が――


「もしかして……」


 なのか?


「悪い、ヴィーナ。今すぐタイムホールを9月4日の11時に繋いでくれ」


「え、でも、タイムホールを使ったら危ないんじゃ……」


「大丈夫だ。気にせず繋いでくれ」


「う、うん。分かった」


 不承不承といった様子で、ヴィーナが隣の部屋にタイムホールを生成する。


「ヴィーナ、悪いがテスト君を借りるぞ」


「うん、別に構わないけど……」


 ヴィーナからテスト君に視線を移す。


「行くぞ、テスト君。俺達で運命を変えるんだ」


「承知いたしました!」


 俺はテスト君と共に、タイムホールに飛び込んだ。

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