失敗
●○●
不審に思われただろうが、これで片庭さんの命は無事救われた。
そう考え、意気揚々と元のタイムラインに戻った俺に突き付けられたのは、片庭さんの運命が変わっていないという残酷な現実だった。
「どうして……」
ニュースサイトによると、片庭さんはタイムホール使用前と同じく、あの曲がり角で頸動脈を切られて殺されたという。
あの道を通るのは、回避させたはずなのに。
「もしかして……」
片庭さんはあの曲がり角で誰かと会う約束をしていて、俺がいなくなった後、その誰かに会いに行ったのではないだろうか。
もし俺の考えが正しければ、片庭さんをあの場所から遠ざけるのは難しいだろう。待ち人がいるなら、迂回してでも、彼女はあの場所に行ってしまうに違いない。
その待ち人が、自分の命を狙う相手だったとしても。
となれば、片庭さんを救い出す方法は一つ――
「犯人を排除する……」
犯人を排除すれば、片庭さんが殺される原因そのものが取り除かれるわけだから、彼女が死ぬこともなくなるだろう。
子供でも分かる、実にシンプルな因果関係だ。
しかし、問題なのは、その実現可能性にある。
排除と言っても、流石に殺すわけにはいかない。そして、周りの人達にその行為を見られるわけにもいかない。見られれば最後、そのタイムラインにいる俺は犯罪者として追われることになるだろう。
誰に見られることもなく、相手を殺さずに無力化する方法なんてあるわけが――
「…………」
いや。
一つだけ、あるかも知れない。
あいつを頼るのは心の底から
『力を貸してくれ、白井。お前の力が必要だ』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます