エキゾチック物質
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上之浦山から鉱石を持ち帰って2週間、ヴィーナは憑りつかれたように鉱石と向き合い、言葉を使わない会話を試み、時には無言の喧嘩を繰り広げ、遂にその正体を突き止めることに成功した。
「恐らく、この鉱石はエキゾチック物質の結晶だね」
そう言って、ヴィーナは赤い鉱石の入った瓶を軽く振った。
「エキゾチック物質? なんだそのスパイシーそうな物質は」
俺がそう問い掛けると、ヴィーナは苦笑いを浮かべた。
「多分それはエスニック料理だね……エスニックじゃなくて、エキゾチック。エキゾチック物質って言うのは、通常の物質とは異なる性質を持つ物質で、マイナスの質量を持っていたり、光よりも速く運動する粒子のことなんだけど」
「光よりも速く? それって……」
驚く俺に対して、ヴィーナは「うん」と言った。
「上手くコントロール出来れば、作れるかも。タイムマシン」
「ほ、本当か……? 本当にタイムマシンが作れるのか……?」
「上手くコントロール出来れば、だよ。でも、アイディアはいくつかあるから、もしかしたらもしかするかも」
ヴィーナの言葉に反応するように、心臓の鼓動が加速する。体温が上昇する。
俺は汗が滲む手で、ヴィーナの両肩を掴んだ。
「ヴィーナ、頼む。なんとしてでもタイムマシンを完成させてくれ」
「勿論。わたしもタイムマシン、使ってみたいしね」
恐らく、研究のせいで睡眠が足りていないのだろう。
対面するヴィーナは、どこか陰りのある笑みを浮かべていた。
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