第5話 のじゃっ子 ロリっ子 のじゃロリババア
★
「ひゃん!」
急に声が聞こえてきたため、驚きのあまり
「
美琴さんが心配そうに声をかけてくれた。さっきまでの私だったら、この声かけ一つでたちどころに元気になっていただろう。
だが、一度意識してしまった以上、この感情からは逃れることはできなかった。
「怖いです、美琴さん……」
私は今置かれている状況に恐怖していた。ここまでの道中は、美琴さんに意識が集中しすぎていたため大丈夫だったが、私は怖いのは苦手である。
勘違いされそうだから先に言うが、私は幽霊を怖いとは思っていない。何故なら、幽霊は至る所に存在しているからだ。町中で人とすれ違っても、何とも思わないのと同じである。だが、もしそのすれ違った人が連続殺人犯だったら?今の現状は、そんな状態なのである。
「カカッ!愉快なことよのぉ。脅かしがいのある
恐怖の元凶である声の主が高らかに笑いながら、私たちに語りかけてきた。そして私を名指しして問いかけてくる。
声の主は姿を現していない。だが、私は姿すら見ていない相手に恐怖していた。何故なら、辺りに凄まじい霊力を撒き散らしているためである。ここまで強い霊力をもった存在を、今まで見たことがなかった。
そして、その霊力の強大さを見て悟ってしまったのだ。
『声の主は、その気になればいつでも私たちを殺せる』
問いかけには、まだ答えられていない。
早く答えないとマズい……
「……い、…づ…ます……」
声がうまく出ない。
恐怖で頭も回らない。
「……うか…ん、ゆう……ん!」
何かが聞こえる気がする。とても優しそうな声だ。
「幽華ちゃん!」
気がつくと、美琴さんに抱きしめられていた。
「美琴さん!?えっ!これ、どういう状況ですか!?」
思考力が戻ってきたと思ったら、すぐにキャパオーバーな情報量が押し寄せてきたため、再び思考がショートしてしまう。
「よかった、幽華ちゃん気がついたみたいだね!心配したよ!声が聞こえてきた後からずっと顔色が悪いし、今は倒れそうになってたし……もしかして、あの声に何か問題があるの?」
美琴さんのお陰で、自分がどんな状態であるのか理解した。まさか倒れかけているとは思いもしなかった。だが、こんなに悠長にしている時間は、私たちにはない。何故なら、声の主の問いかけに、私はまだちゃんと答えられていないからだ。きっと怒っているに違いない。
「美琴さん!今すぐ逃げないと!早くしないと大変なことになる!」
「幽華ちゃん、落ち着いて!」
「早くしないと……。逃げないと……。この声を発してるやつに、殺されちゃう……」
今すぐ逃げ出したかった。とても怖かった。だが、足が震えて動かない。
「この声が原因なのね……よし、わかった……」
美琴さんが何かを言っている。何を言っているのかは聞き取れなかったが、決意に満ちた表情をしている。
そして、今度は私にも聞こえる声量で宣言した。
「美琴お姉さんに、任せなさい!幽華ちゃん!」
どういう意味かは分からなかった。だが、その後の美琴さんの行動によって、その言葉の真意が分かった。
「カカッ!茶番はもう終わりかえ?つまらんのう、もう少し妾は見物していたかったのじゃが」
「そこだぁぁぁ〜!!!」
「何をしておるのじゃ?……って、何故こちらに突っ込んでくるのじゃ!?おい、やめるのじゃ!やめるのじゃ〜!!!」
美琴さんの宣言のあと、静観を貫いていた声の主が再び語り始めた。そして、その声を聞いた美琴さんが声の
美琴さんの宣言の真意は、声の主の居場所を突き止め、正体を明かすことだったのである。
そして……
「いてて……やっぱりここにいたね!もう観念して姿を現しなさい!」
ふっ飛ばされて茂みの中にいるであろう声の主に対し、美琴さんはそう告げる。
「まったく、最近の童は礼節すら弁えられないのかえ?……まあ、そんなことはもうどうでもいいのじゃ!妾に一矢報いた褒美じゃ、特別に妾の優美な
観念したのか、声の主は恨み言を呟きながら、私たちの前に姿を現した。
しかし、その姿は……
「どうじゃ、美しかろう!……何を二人して惚けておるのじゃ?ははん、さてはお主ら妾の美しさの前に声すら出せないのじゃな。カカッ!しょうがない童たちじゃのぉ!」
声すら出せなかった。
だが、先程までとは違い、理由は恐怖のせいではない。何故なら、彼女は既に霊力を発していないからである。
では、彼女の容姿が恐ろしかったからか?
いや、それも違う。彼女の言っている通り、彼女は美しいからだ。
では何故か、その答えを私は口にしてしまう。
「
彼女の外見はとても幼く見えた。それこそ、小学校低学年ぐらいの子と比べても、全く遜色ないほどに。だが、膝下まで伸ばした真っ白な髪や、古風テイストな口調が、彼女を大人びて見せていた。
『まさしく、ロリババアなのである』
「誰がババアじゃ!失礼なちんちくりんじゃな!妾の
憑り殺すと強い言葉を投げかけられたが、先程までの恐怖が嘘であったかのように、全く怖さを感じなかった。それは、彼女が霊力を出さないでいてくれているお陰でもあるが、彼女の正体がロリっ子であったせいで、気が抜けているためでもある。
「分かった、分かったから。ごめんね、ババアって言っちゃって」
「おい、ちんちくりん!何じゃその喋り方は!まるで
「だって、自分が永遠の八歳って言ったんじゃん!だからこういう喋り方をしてるの!」
「ぐぬぬ……分かったのじゃ、特別にその喋り方で許してやるのじゃ」
悔しそうな表情をするロリっ子。何も知らない人が見れば、微笑ましく映るだろう。
かくいう私も、既に恐怖という感情は一切なくなっていた。それどころか、少し仲良くなれた気さえしていた。
だから、そろそろ聞かなければならない。
「ねぇ、君は一体何者なの?」
彼女の正体について。
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