第2話 心の霊より真の霊!
★
そんな訳で幼き日のミステリアス美人さんとの思い出にふけっていたのだが、目の前では以前金髪の残念系美少女がニマニマ顔を晒している。
ニマニマしていてもその容貌は健在である。
「全ての幽霊が怖いわけじゃないけど、
さくらの顔に見惚れて緩んでいた顔を直しながら言い放った。
「
ニヤケ顔から真剣な面持ちに変化した私に合わせたかのように真顔で答えたさくらだったが、すぐにニヤニヤ顔に戻り言った。
「ますます興味が湧いてきた!僕の知的好奇心がエベレストで
何を言っているのかは分からなかったが、どうやら神薙の森にますます興味が湧いたようだ。
幽霊が見える私が恐れる場所という甘美な響きが刺さってしまったのだろう。
こんなことになるのなら、幽霊が見えることを秘密にしておけばよかったと少し後悔した。
流石にこの流れはマズいため、何か止める手立て考えるも、今の彼女に何を言っても火に油を注ぐのと同義であるため手詰まってしまう。
しかし、神は救いの手を差し伸べて下さった。
「いつも私たちの誘いに二つ返事で応じる幽華ちゃんがここまで言うんだから、行かない方がいいんじゃないかな?」
神は今一番欲しい言葉を言い放つ。
私が言ったとしてもあまり効果はないが、第三者が言えば効果覿面なそんな言葉である。
しかもそれがお互いをよく知る友人からの言葉であれば、尚の事であった。
「確かに、
そう、神の正体は静流ちゃんであった。
黒髪ストレートのロングヘアーで、優しそうな目元からは確かな慈しみの心を感じる。
色っぽい恵体は、いつ見ても眼福の一言に尽きる。
「静流ちゃんを一言で言い表すなら?」と言う質問があれば、皆が清楚な大和撫子と応えるぐらいには品が良く美しい美少女である。
静流ちゃんのお陰で変わり始めた流れを変えないために、私は真実を語る。
「神薙の森はね、真霊スポットなの」
反応は予想通りであった。
「知っているよ。神薙の森が心霊スポットなのは
「漢字が一文字違うんだよ」
すかさず私は補足をする。
「心の霊じゃなくて、真の霊と書いて、真霊スポット」
謎の間が空いたが、静流ちゃんが気を利かせて質問をしてくれた。
「幽華ちゃん、心霊スポットと真霊スポットって何が違うの?」
私は待ってましたとばかりに知る限りの真霊スポットについての情報を話した。
一.真霊スポットとは、本来霊が住んでいる世界の通称である。
二.真霊スポットと人間の住む世界は隔たれており、交わることはない。
三.二で説明した通り本来二つの世界は交わることはないのだが、真霊スポット内で起こった幽霊同士の縄張り争いにより、負けた幽霊が真霊スポットから追いやられ人間の世界に溢れ出てきてしまった。
四.溢れ出てきた幽霊は真霊スポットの周りを新たな縄張りとした。この幽霊たちの新たな縄張りこそが、私たちがよく耳にする心霊スポットである。
五.心霊スポットからも追いやられた弱い幽霊は、住処を探してあらゆる場所に現れる。私がよく話をする幽霊はほとんどこいつらである。
「つまり、心霊スポットの中には真霊スポットなる場所があり、真霊スポットには
「そういうこと」
長ったらしい私の説明からここまで理解できるさくらは、やはり頭が良い。
故に、当然の疑問を投げかける。
「でも、心霊スポットに肝試しに行くのは
全く持ってその通りである。
★
第五次オカルトブームに湧く現代、若者の間で心霊スポット巡りが一大ブームとなっていた。
そのため、心霊スポットから無事に帰ることができた若者の間で体験談や噂について話し合う掲示板やスレッドが乱立していた。
神薙の森も例によって大山市一番の心霊スポットとしてその名を轟かせており、白い服に赤いスカートの女性の幽霊の噂が最も有名である。
だが、これらの情報を持ち帰った者たちは、偶々真霊スポットに足を踏み入れることがなかった者たちである。
その理由を、先程のさくらの質問の答えとして言う。
「本当にヤバい場所は噂にすらならないよ。だってそこに立ち入った人は戻って来れないから」
さくらと静流の表情が曇る。
私の言わんとすることの意味を理解したのだろう。
ここで言う本当にヤバい場所は勿論真霊スポットのことであり、真霊スポットは心霊スポットの中にあるということ、本来は立ち入ることのできない場所であることは説明した。
これらの情報と私の発言を照らし合わせれば、自ずと答えが分かる。
そう。
「真霊スポットに迷い込んだら最後、二度と戻ってくることはできないんだよ」
私は二人に追い打ちをかけるかのように言い放った。
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