木の実を探しに……
EVI
第1話
「お兄ちゃん、ぼく、お腹すいたよぉ」
弟が、お腹を抱えながら物欲しげにつぶやいた。
「我慢しなさい、今外は吹雪で、ろくに食べ物に在り付けないんだから」
今は冬。ありつける食べ物も少なく、その少ない食糧も探せないこの吹雪。
僕たちはどうしようもない空腹に、襲われていた。
そんな時、ふと弟が口を開いた。
「お兄ちゃん、ぼくね、この雪の季節が来る前に、たっくさん木の実を地面に埋めておいたんだ‼︎この雪が止んだら、取りに行こうよ!」
これでとりあえず、僕たちはこの冬を乗り越えることができるかもしれない。
僕らは早く吹雪が止むことを願いながら、抱き合って眠った。
翌日、空は昨日の吹雪が嘘だったように真っ青だった。
「これが雪かぁ、真っ白だよ〜」
そういえば弟は、雪を見るのが初めてだっけ。
お母さんが死んでしまって、二人で暮らすことになったぼくらには、まだこの世界のことをあまり知らない。
「見てみて〜僕の足跡だよ〜〜」
足跡をつけてはしゃぐ弟に、今やめさせてしまうのは酷だと思い、しばらくそれを眺めていた。
(グ~)
ザクザクと言う雪を踏む音をかき消すように、その音は鳴り響いた。
「えへへ、やっぱお腹すいたや。お兄ちゃん、そろそろ僕の木の実を食べようよ」
そう言って近づいてきた弟の元へ僕も近づき、
「そうだね、そろそろ移動しようか」
こうして二人で、その木の実がある場所へと向かった。
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