第4話

康太は、この居酒屋で私と同じ時期にバイトを始め、就職と共に辞めた男である。





「あー、こないだ別れました」





あらっ、と驚く安西さんに、私は軽く笑いかける。



バイト仲間だった康太と付き合い始めたのが大学2年の頃、別れたのがついこの間。



4年ほどの付き合いの終わりは何ともあっけなかった。予想外の返事に戸惑う安西さんに、私は軽い口調で言う。





「ほら、私って大学卒業してもここでバイトしてるフリーターじゃないですか。康太的には彼女がフリーターっていうのが許せないみたいで、『俺との将来のためにもちゃんと働いてくれよ』からの浮気です」





相手は康太と同じ会社の経理の女の子。



ひとり暮らしをしながら毎日手作り弁当を作り、週一でヨガスクールに通い、休みの日にはお菓子を作り、資格の勉強も怠らず、毎日良い香りを振り撒き、自分磨きを辞めない、そんな私とは真逆の女の子だという。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る