第5話
「浮気かあ。あら、でも茉夏ちゃん康太くんと一緒に暮らしてなかった?住むところは大丈夫なの?」
安西さんも旦那の浮気で離婚しているクチだ。
浮気、という単語に忌々しい顔を見せた安西さんだったが、すぐに私の住まいについての件を思い出したようで心配した面持ちになる。
私は苦笑いを浮かべて彼女の顔を見つめ返す。「カンパーイ!」と言う掛け声と共にグラスが重なり合う音がする。
「今は大学の友達の家を家賃諸々折半で居候させてもらってます。さすがの私も元彼と浮気相手が出入りする部屋に暮らす余裕はないですし」
「それはそうよねえ」
「でもずっとは無理ですし、そろそろ真剣に色々動かないとまずいんですよね。……ああー、パトロンが欲しい。人のスネを齧って生きていきたい。働く意味がわからない。楽したい」
長年の付き合いになる安西さんを前に思わず本音が次から次へと溢れだす。
反労働主義である私を重々承知している彼女は、けらけらと笑いながら「ブレないわねえ」と相槌を打ち、私から顔を逸らす。
その顔がはっとし、瞬間的に対客人用の笑顔になる。
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