第4話

 3日目、朝。

 目覚まし時計がないから何時何分か分からねえ。

 ところであいつらは兄さんの家に着いたかな。

 智はそんなことを思った。涙が込み上げてきた。

 そういやこんな時ドラマだったらどうだろう。疲れすぎてそんなことしか考えられなかった。しかし、サトシにはピンとくるものがあった。


 高速をゆく二台の車の話に戻ろう。

 残り十九キロ。残り少し。ドライブを楽しもうじゃないか!

 ヒコとラインを取るみゆき。

 心配げな泉谷の両親。

 泉谷の両親はこれまでないくらい心配している。なんてったって「こんなこと」初めてだ。

 流している曲は「15の夜」

 リクエストしたのは母だ。

 康二は微笑しながら「バイク盗んだ冤罪かな?」と言った。「それとも煙草?」

 康二は、「どちみち家(を)出(た)最中でのことだから俺らは見てねえんだぜ?」 

 頭狂ってんのか、と言いかけて口を塞いだ。みんなが泉谷Bをガン見していた。今は、空いている。泉谷Bは泉谷Cの肩を叩いた。

 ヒコから返信が来た。

「今からそっちに向かう」

 

 泉谷大輔はというと、家にいた。

 みゆき破、「目的地を間違えている」と叫んだ。残り16キロくらいだった距離が反対方向の64キロ。宇都宮から幸手くらいの距離だ。まだ距離がある、ドライブを楽しもうじゃないか。

 

 渋滞に巻き込まれ、2時間経った。

 渋滞に巻き込まれなかった少年SOたちの車が追い上げ、家族の車が家に着く頃には集合していた。

「にいさーん」

「はーい」

 なつかしき兄が出てきた。


 一家はそれほど感動せず、何気なくテレビを付けた。

 そのニュースで、泉谷一家が一斉に口に出した言葉と、泉谷Aのピンときたものはおんなじだった。

「偽物(似せ物)の泉谷たいほ」

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