18 最後の切り札
山間部の空気は、不気味なほど静まり返っていた。
零はルビーの魔石が埋め込まれたブレスレットを見つめながら、次の戦いへの準備を進めていた。目の前には、魔力を込めた短剣が光を放ち、完成したばかりの切り札のような輝きを放っていた。
「零、本当に一人でやるつもり?」
ハルが念話で話しかけてきた。その声には焦りが滲んでいる。零は少し目を細め、彼女を見つめた。
「ハル、お前はここで待っていてくれ。」
「えっ、どうして?私も戦えるよ!」
「いや…分かっているだろう。お前にかけられている防御魔法は、リヴォールにはほとんど効果がない。」
零の言葉に、ハルは一瞬黙り込んだ。そして、静かに続けた。
「でも、私は零の力になりたいの。」
「分かるさ。でも、お前が傷ついたら俺は戦えなくなる。それが一番危険なんだ。」
零は少し微笑みながら、手を伸ばしてハルの頭を軽く撫でた。
「ここで俺を信じて待っててくれ。それが一番の助けになる。」
ハルは寂しそうに目を伏せたが、やがて頷いた。
「分かった。でも、絶対に無事で帰ってきてね。」
「ああ、約束する。」
リヴォールとの決戦
山の頂に立つリヴォールの姿は、前回よりもさらに禍々しい光を放っていた。その全身から溢れる黒い炎は、大地を焦がし、周囲の空気を揺らしている。リヴォールは零を睨みつけ、不敵な笑みを浮かべた。
「再び来たか、人間よ。だが、今度は容赦せぬ。」
「俺もだ。ここで全てを終わらせる。」
零は短剣を構え、ブレスレットに手を添えて魔力を込めた。ルビーが鮮やかに輝き、その光が剣へと流れ込んでいく。
切り札の力
リヴォールが黒い炎を纏った巨大な爪を振り下ろす。その一撃は地面を抉り、衝撃波が零に迫る。しかし、零は炎の障壁を作り出し、その攻撃を防いだ。
「燃え尽きろ!」
炎の壁が爆発的に広がり、リヴォールの爪に火の傷を与えた。その瞬間、零は一気に間合いを詰め、短剣を振り上げた。
「この一撃で終わらせる!」
短剣が輝き、ルビーの魔力が放たれる。それは巨大な火柱となり、リヴォールの胸元に叩き込まれた。黒い霧が吹き飛び、リヴォールが大きく後退する。
「ぐぅ…人間ごときが…!」
リヴォールは怒りの咆哮を上げ、全力で闇の魔力を放ち始めた。その魔力は周囲の空間を歪め、次々と黒い刃を作り出して零を狙った。
危機を乗り越えて
零は身体強化スキルを使い、闇の刃を紙一重でかわしながら反撃を繰り出した。ブレスレットのルビーがさらに輝きを増し、炎の剣として短剣に宿る。その刃はリヴォールの防御を突破し、次々と深い傷を与えた。
「これが俺の全力だ!」
零は最後の力を振り絞り、短剣を振り下ろす。その一撃がリヴォールの胸元に深く突き刺さり、封印の力を解放した。リヴォールの体が激しく揺れ、黒い霧が激しく舞い上がった。
「人間よ…貴様…!」
リヴォールの声がかすれながら響き、ついにその体が崩れ落ちた。
戦いの余韻
静寂が訪れ、黒い霧が晴れると、山の頂には零だけが立っていた。彼は大きく息を吐き、短剣を納めた。その腕のブレスレットが微かに光を放ちながらも、徐々に輝きを失っていく。
ふもとで待っていたハルが駆け寄り、念話で叫んだ。
「零!無事だったのね!」
「ああ。全て終わった。」
零はハルの頭を撫でながら、静かに夜明けを見つめた。
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