17 リヴォールとの再戦

黎明の山間部に、不穏な闇が渦巻いていた。

零は静かに剣を納めた鞘を握りしめながら、山道を進んでいた。左腕には輝くルビーの魔石が埋め込まれたブレスレットが光を放っている。闇の中、リヴォールの気配が次第に強まり、空気は次第に重くなっていった。


「感じるか、ハル。あの圧倒的な魔力を。」

零が低い声で呟くと、隣を歩くハルが尾を揺らしながら念話で応える。

「うん。近いね…。でも、魔物の群れもいるみたい。」

「時間がない。奴の手先を排除しながら進むぞ。」


魔物の群れとの戦闘

濃霧が覆う中、赤く輝く複数の目が零を睨みつけていた。魔物たちが一斉に咆哮を上げ、襲いかかってくる。零はブレスレットに触れ、ルビーの魔力を解放した。


「燃え尽きろ!」

腕を振ると同時に、ルビーの輝きが燃え上がり、巨大な火柱が魔物たちを飲み込んだ。炎が空気を焼き、数体の魔物がその場で黒い霧と化して消える。しかし、後ろから新たな群れが迫っていた。


「零、後ろ!4体来るよ!」

ハルの声に即座に反応し、零は振り向きざまに火球を放つ。その火球は地面を跳ねるように飛び、魔物を次々と焼き払った。

「こんな程度の魔物で足止めできると思うな。」


零は気配察知スキルで周囲の状況を把握しつつ、次の魔物を炎の壁で遮る。ブレスレットのルビーが輝きを増し、その火力はさらに強力なものとなっていた。


リヴォールの登場

魔物を一掃した瞬間、空気が一変した。濃密な闇が周囲を覆い、遠くから低い声が響く。

「愚かな人間よ、再び我の前に立つか。」


霧の中から姿を現したのは、巨大な翼を持つ妖魔王リヴォール。その全身は黒い炎を纏い、目には狂気と力への渇望が宿っていた。圧倒的な魔力が周囲を震わせ、大地が微かに揺れる。


「リヴォール、ここで終わりにする。」

零は短剣を構えつつ、ブレスレットに手を添えて魔力をさらに高めた。そのルビーが青白い火光を帯び、空気を焼く熱を放っている。


「その小さな炎で我を討つつもりか?」

リヴォールは嘲笑し、巨大な翼を広げた。その動きとともに黒い霧が広がり、巨大な爪を振り下ろしてきた。


火魔法での応戦

零は瞬時に火壁を作り出し、リヴォールの爪を遮った。その火力が霧を裂き、リヴォールの腕に一瞬の隙を作る。零はその隙を見逃さず、短剣を振り抜き、翼に深い傷を与えた。


「ほう…なかなかの力だな。」

リヴォールは黒い炎を纏った球体を放ち、零に向けて弾き飛ばしてきた。零はすぐさまブレスレットに触れ、火の障壁を作り上げて攻撃を防ぐ。その瞬間、零は障壁を利用して距離を詰め、短剣を再び振り上げた。


「炎の力を見せてやる!」

腕のルビーがさらに輝きを増し、短剣に炎を纏わせた一撃をリヴォールの胸元に叩き込む。黒い霧が飛び散り、リヴォールが大きく後退する。


リヴォールの退却

胸元に深い傷を負ったリヴォールは、怒りの咆哮を上げた後、大きく翼を広げて闇の中へ消え去った。その場には、重い気配だけが残り、静寂が訪れた。


零は剣を納め、大きく息をついた。そばでハルが心配そうに念話で話しかける。

「零、大丈夫?」

「無事だ。ただ、奴はまだ完全には倒せない。」

零の声には疲労が滲んでいたが、その目には確固たる決意が宿っていた。


次なる戦いへの準備

零とハルは静かに町へ戻りながら、リヴォールの完全な復活を阻止するための策を練り始める。ルビーの輝きは少しだけ薄れたが、それは次の戦いのために力を蓄えているかのようだった。


「次は終わらせる。」

零は静かにそう呟き、闇を切り裂く火の力をさらに高める決意を固めた。

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