16 勇者の真価

リヴォールの圧倒的な魔力が空を裂き、町全体を覆い尽くしていた。

零は剣を握りしめ、リヴォールの恐ろしい力を真正面から見据えていた。魔物の軍勢が次々と町を襲う中、零は影のように動き、人々を守るべく戦い続けていた。


「零、こっちにも魔物が来る!」

ハルの念話が響き、彼はすぐに動いた。短剣を振るい、空間を裂くような一閃で魔物を一掃する。その動きには迷いがなく、長年の戦いで培った経験が随所に表れていた。


リヴォールとの最初の衝突

空を舞うリヴォールが低く嘲笑を浮かべたように見えた。彼はその巨大な翼を広げると、闇の魔力を零に向かって放った。その一撃はまるで空間を飲み込むかのようで、零は剣を構えてその力を防ぎながら、ハルに声をかけた。


「ハル、無事か?」

「大丈夫だよ。でも、あいつの力、本当にヤバい!」

「分かってる。だが、ここで退くわけにはいかない。」


零は短剣を強く握りしめ、魔力をさらに込めた。その刃先が青白い光を帯び、リヴォールの攻撃を弾き返すと同時に、一気に距離を詰めた。


リヴォールが冷笑を浮かべ、闇の刃を零に向けて放つ。その一撃をギリギリでかわしながら、零は短剣を振り上げ、リヴォールの翼に切りつけた。刃が深く食い込み、黒い霧が吹き出す。

「ほう、ここまでやるとはな…だが、まだまだ足りん!」


町の人々の不安と希望

町の中心部では、避難した人々が怯えながらも零の戦いを遠くから見つめていた。誰もがその背中に全てを託し、必死に祈っている。


「零さん、負けないで…!」

その声は、零には届かない距離だったが、彼の心の中に確かな決意として刻まれていた。彼はこの町を守るため、そしてここで得た新たな日常を取り戻すため、戦いをやめるわけにはいかなかった。


リヴォールとの一進一退の攻防

リヴォールの攻撃は次第に激しさを増し、零も全力で応じていた。しかし、戦いが長引くにつれて、零の体力は確実に削られていく。

「零、無理しないで!」

ハルの念話に、零は短く応えた。

「分かってる。でも、奴をここで止める。」


零は短剣を再び振りかざし、魔力を最大限に解放した。その一撃がリヴォールの胸元に直撃し、大きなダメージを与える。リヴォールは一瞬後ずさりするが、すぐに狂気じみた笑みを浮かべた。

「悪くない、だが人間よ、貴様ごときに我を倒せると思うな!」


一時的な退却

リヴォールは最後に大きな闇の波動を放ち、姿を消した。彼の力はまだ完全には戻っておらず、一旦引くことを選んだのだった。


零は剣を納めながら、大きく息をついた。ハルが駆け寄り、念話で声をかける。

「零、大丈夫?」

「ああ。でも、次はもっと厳しい戦いになるだろう。」


零はリヴォールとの戦いがまだ続くことを確信しながら、町に戻る準備を整え始めた。彼の目にはまだ消えない決意の光が宿っていた。

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