13 蘇る影

町外れの荒野に、不穏な気配が漂い始めていた。

夜ごと零の気配察知スキルに引っかかる魔物の波動は、日を追うごとに強まりつつあった。

その数も増え、ついに町近くの林にも小型の魔物が出現するようになった。


零は広場で人々の賑わいを眺めながら、静かに眉をひそめた。

「これはもう偶然じゃ済まされないな…。」

そばにいたハルが念話で声をかける。

「ねえ零、また波動が強くなってるよね。私たちだけで対応できるのかな?」

「まだ町の人たちには気づかれてないが、限界は近いな。奴が完全に蘇る前に動かなきゃならない。」


零は周囲の人々を安心させるため、普段通り振る舞いながらも、胸中では徐々に作戦を練り始めていた。


その夜、零は町の北側に広がる林で調査を行った。

気配察知スキルは、数十メートル先に複数の魔物を感知していた。

その数はこれまでよりも多く、動きも活発だった。ハルが林の隅に座り、念話で状況を報告する。

「ねえ零、7体いるよ。しかも、今までより大きい。」

「分かった。一体一体の動きはまだ鈍いな。手早く片付けるぞ。」


零は剣を構え、素早く魔物たちに接近した。

剣閃が暗闇を切り裂き、次々と魔物が倒されていく。

その中で一体の魔物が通常のものより大きく、異様なオーラを纏っていた。


「こいつは…!」

零は慎重に動きを観察しながら攻撃を仕掛けた。

魔物は鋭い爪を繰り出して反撃してきたが、零はその一撃をかわし、隙を見つけて一閃した。

あたりは静寂に包まれた。


「零、大丈夫?」

ハルが駆け寄り、零のそばで心配そうに念話を送る。

「平気だ。でも、今のはただの魔物じゃない。奴の力がどこかで目覚め始めている。」

「リヴォールの影響…ってこと?」

「ああ。完全に復活する前に何とかしないとな。」


翌日、零は加工場で装備の点検を行っていた。

剣を研ぎながら、これまでに採掘した宝石の中から、特に強い魔力を秘めた石を選び出していた。

「これを使えば、新しい武器を作れるかもしれないな。」

零は自分自身にそう呟きながら、作業に集中した。

そばでハルが静かに見守っていたが、突然念話で声をかける。

「ねえ零、何か考えがあるの?」

「今のままじゃリヴォールには勝てない可能性がある。だから、こいつを使って切り札を作る。」

「私も手伝うよ。あなたに負けないくらい頑張るから。」


零はハルの言葉に頷き、新たな戦いへの備えを整える決意を固めた。


その夜、零は空を見上げながら深く息をついた。

星空の下、彼の心には緊張感と覚悟が入り混じっていた。


彼はふとハルに視線を送り、静かに語りかけた。

「俺たちに与えられた時間はもう長くないかもしれない。だが、どんな状況でも守り抜く。それが俺の役目だ。」

「もちろん、私も一緒に戦うよ。絶対に負けない。」


二人はその場に立ち尽くし、静かな決意とともに迫りくる危機に備えた。


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