14 準備

朝焼けが町を包む中、零は加工場で黙々と作業を進めていた。

机の上にはこれまでに採掘した宝石が並び、それぞれが微かに光を放っていた。その中でも、ひと際輝きを放つルビーとエメラルドが零の手に握られていた。彼はこれを新たな武器の材料にするつもりだった。


「零、その石、本当に使っちゃうの?」

念話で語りかけてくるハルの声には、少しだけ心配が滲んでいた。

「ああ。これだけの質の宝石を集めるのは大変だったからな。でも、これがなければリヴォールには勝てない。」

零は慎重に宝石をセットし、加工機を操作し始めた。


レーザーが石を精密に切り出し、機械が細かく研磨を行う。宝石は次第にその輝きを増し、零の頭の中に描いた武器の形へと近づいていく。


「できたぞ…。」

完成したのは、宝石を中心に据えた短剣だった。刃は薄青く光り、柄には零が刻んだ特別な紋様が彫られていた。

「これなら奴の力を封じ込められるかもしれない。」

零は短剣を見つめながら、静かに決意を固めた。


その日の夕方、零は町外れの林で特訓を行っていた。

完成した短剣を手に、魔力を込める練習をしていた。短剣は零の力に反応し、刃先が輝きを増していく。近くで見守っていたハルが、目を輝かせて念話を送る。

「零、その短剣、すごく強そうだね!何か特別な力があるの?」

「ああ。これに込めた魔力は、奴の力を封じるためのものだ。ただし、成功するかどうかはやってみないと分からない。」

「でも、零ならできるよ!私も手伝うから!」


ハルの言葉に零は微かに笑みを浮かべ、短剣を鞘に納めた。

「ありがとう。お前がいてくれると心強いよ。」


夜になり、零は町の外れにある小さな丘に登った。

満天の星空の下、彼は静かに周囲の気配を探った。気配察知スキルがかすかな波動を捉える。リヴォールの復活が近いと感じるその波動は、日を追うごとに強くなっていた。


「準備は整った。あとはタイミングを見て動くだけだ。」

零は夜風に吹かれながら、短剣の柄を握りしめた。そのそばでハルがそっと寄り添い、念話で励ましの言葉をかけた。

「零、私たちなら絶対に負けないよね。」

「ああ。これまで乗り越えてきたんだ。今回もやるだけだ。」


町ではまだ平穏な日常が続いていた。

人々が温泉や市場で過ごし、笑顔を浮かべる中で、零はその日常を守るための戦いが間近に迫っていることをひとり感じていた。


「どんな状況になっても、この町だけは守る。」

零の心に静かな決意が灯り、その目には迷いのない光が宿っていた。

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