06.
「いや……大丈夫! 全然平気!!」
「
「大丈夫そう!?」
「多分、行ける……かな!」
深く刺さった鉄パイプは、見た目と手触りは酷かったが、水の浮力を得た俺の体を、軽々と支えてくれる。ゴミ山に足が着いたところで、なんかドッと疲れが出てきた。
「待ってて! 今警察、か、消防か呼ぶから……!」
「えっ!? あ、それは、ちょ……タンマ!」
へ? と、島田が顔を上げる。
「警察は勘弁してくれ! あっちに釣りしてるオッチャンたちいるから、そっちに声かけてくれないか!」
「え!? い、いや、でも!」
「マジで! 島田、頼む! 無理言ってるのはわかるけど……!」
チラ、と島田の隣を見る。
ずっと視界に入っているのだ。
俺の方を見て、恐れと、罪悪感にまみれている、
島田が俺の視線をなぞるようにして、同じように柳之介を見た。それで、すべて悟ったらしかった。「……わかった!」と、最小限まで削った躊躇いの後に首肯して、手に持っていた自分のスマホを、柳之介に差し出した。
「これ渡しておくから! 佐原君のこと見てて。何かあったらここ押して、110番するんだよ! いい!?」
「あ、ぅ」
柳之介のは返事になっていなかったが、島田の強い眼差しに惹かれるようにして、その顔を見ていた。それを確かめると、島田はコンクリートの土手を駆け上がって自転車にまたがる。そして風のように、下流の方へと去って行った。
少しの間、沈黙があった。
俺には息を整えるためで、柳之介にとっては恐怖の間だったのだろう。俺から目を逸らすまいとしながらも、その顔は、罪悪感と戸惑いで満ちていて。
「なぁ、気にしなくていいから。ほんと、気にしなくていいから」
俺がそう声をかけると、ビクッと柳之介の体が震えた。
「……
「わざとじゃないんだよな。大丈夫、わかってるよ。だから、そんな顔すんなって。マジで、全然平気だから、こんなの。へっちゃらだからさ」
言うほどへっちゃらかと言うと、とりあえず両ポケットに入れたスマホと財布は死んだな、と思うのだが、大したことじゃない。俺が平気だと口にすれば、少しばかり安心する柳之介の表情を見ていると、それも安いなと思えるのだ。
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