02.
説明しよう。俺は先週末、
つまり、まだ、ちゃんと断ってない。
「……で、保留ってことか」
「い、一週間待ってくれって言っただけだよ」
「
「え、どうしてわかるんだ」
「顔がニヤついてるぜ~」
「ウッ」
俺は慌てて顔を手で覆って、揉む。なるほど、確かに口角がおかしなことになってるな。
「けど柳之介のことがあるから保留ねぇ。ふーん」
「なんか、だって、悪いだろ。あっちの返事なあなあにしてるのに、先にこっちにOK出すって、こう、順番が違うというか」
「ンー、賢治って面倒くさがりのくせに、そういうとこ真面目だよな」
雄太は至って冷静だ。俺が浮かれてるから、相対的にそう見えるだけかもしれないが。
……いや、冷静というか。
「……雄太。お前、不機嫌か?」
「えー?」
俺が尋ねると、雄太はあからさまに不機嫌な顔で振り返った。
そして、わざとらしく唇をとがらせて、
「そりゃあ寂しいですよ。だってさぁあああ、賢治に彼女ができたら、絶対俺のことかまってくれねーじゃん! わかるこの気持ち?」
「えええ? んんん……いや、わり、わかんねーかなぁ」
「あーあ、惚れた方は辛いよねぇ」
雄太は最近、平気でこういうことを口にする。最初は抵抗があったが、なんか慣れてきたし、というか止めてもやめないしで、今はほったらかしだ。女子も、女子同士で遊びに行くときに『デート』などと銘打つことがあるから、あれと同種だと思っている。
「けどそっかぁ、島田かぁ」
「めちゃくちゃビビったよ。なんか、全然、そういう感じだって知らなかったから」
「そんな目立つ方じゃないもんな。かといって、地味~なタイプでもないし」
「吹奏楽部だっけ。
「そっかぁ、賢治付き合うのかぁ、そっかぁ。へえ、ふーん。ほーん? あそぉ、ついにねぇ……。……ちょっとマジで悲しくなってきたわ」
「う。な、なんか悪かったよ」
そこまで言われると、まあ、なんだ。気持ちはわからんでもない。俺だって、もしも雄太に彼女ができて、結婚します旦那になりますこの家庭を俺が支えていきますとなったら、親ほどではなくとも、兄弟程度には感慨深くなるはずだ。……こいつが結婚かぁ……。
「うっ……」
「んん!? 賢治どうした!?」
「い、いや、なんでもない」
いかん、これはなかなか威力があるぞ。俺も思ったより、こいつに依存してたかもしれない。それを振り払う意味も込めて、雄太に告げる。
「お前はいい旦那になれるよ」
「賢治の?」
「ごめんなさい」
「フラれた! 秒でフラれた!!」
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