第3話

01.


 あらすじ。

 ある日唐突に小学生の男の子に告白されて、「じゃあ友達から」と答えました。

 すると恋人関係にこそなりませんでしたが、何回かデートする流れになり(俺は「遊ぼう」としか言っていない)、ちょこちょこ遊びに行きました。

 たまに友人が参加して変な修羅場になります。

 むしろ俺よりそいつと意気投合しちゃって、たまーにそいつ経由でデートの約束取り付けてたりします。どういうことなの。

 それが今も続いています。


 まだ、断れていません。








「僕の家、ここです。ここの五階です!」

「……おおー」


 さて、俺はどこにいるでしょう。

 正解は、瀬尾せおくんが住んでいるというマンションの前。瀬尾くん、見た目は日本家屋の玄関から飛び出してきそうな典型的な野球少年だから(それも偏見なのだが)、連れてこられた場所が、ピカピカのけっこう高級なマンションでびっくりしている。

 比較的最近建った建物で、雄太ゆうたと「なんかでけーマンション建つらしいね」とか、小学生のころに噂していた建物だ。人生、どこで何と縁があるかわからないな。


 で、どうしてここにいるのか、という話なのだが。


「えーと、ご両親はいるの? 俺、迷惑じゃない?」

「全然平気です! むしろ、呼んで〜、って、ママから言われたんです! お母さんはちょっと気難しいとこもあるけど、でも優しいから大丈夫です!」

「お、おう?」


 ちょっと理解が追いつかなかったが、瀬尾くんは俺の腕を引っ張ってマンションに入ってしまった。ガラス扉を開いた先に、清掃員がこまめに入っているのであろう、清潔感のあるエントランス。瀬尾くんは待ちきれない様子で、オートロックまでぴゅーっと走ると、慣れた手つきで「504」を入力する。


『はーい。リュウ? おかえり~』

「ママただいま! 開けてー!」

『はいはい、開けるよ~』


「…………」


賢治けんじさんこっちです!」

「んっ。お、おう」


 無言で斜め後ろに立っていた俺(気まずくてカメラの死角にいた)は、瀬尾くんに引っ張られて自動ドアへと入っていく。来客用であろうソファーと、演出用の棚や植物が置かれたエントランスを横目に見ながら、引っ張られるままに奥へと進み、エレベーターに乗った。


 ……なんか、ふつうっぽいな。


 この子の両親がどんな人なのか気になっていたが、至極普通の会話だった。

 というか俺のことは説明してあるのだろうか。説明しているとしたら、どうやって? 友人関係で、というなら問題ないが、この年頃の子に唐突に高校生の友人ができるのは、ちょっと普通じゃない気がする。


 万が一にも「好きな人です」とか、「恋人なんです」とか説明してたら?


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