04.


「……じゃあ、雄太ゆうたならどう断る?」

「え? 俺? どう?」

「そう。急に小学生が来て、告られたら」

「えぇ? 人によるけどー……うーん、今年は受験生だしなぁ」

「そういう理由かよ」

「小さい子って、まだ全然性格が変わる余地があるじゃん……ああでも」

 顎に手を当てて考え込んでいた雄太は、はっと顔を上げた。


賢治けんじならいける。賢治なら全然いけるぞ、俺」

「はあーっ!?」


 何言ってんだこいつ!?


「馬鹿じゃねーの!? はっ、何言ってんのっ、おまっ」

「え。俺、けっこう賢治のこと好きだったよ。小さいとき」

「マジで!?」

「そこらの女子よか、ずっと」


 まじかよ。


「えっ、お前それマジで言ってる? 俺に? いつの話だ? ガチか?」

「いや、ガチかって聞かれりゃぼちぼちだけど。幼稚園から小学校の……んー、二、三年にかけてー、だったかな」

「うわ、なんだそのリアルな期間。けっこうなげぇな……」


 小学校に入ってからは、毎日遊ぶくらいには仲良しだったが、そんなことを思われていたとは知らなかった。周りからの冷やかしは、冷やかしという行為はともかくとして、奴らが認識していたことはあながち間違いでもなかったらしい。


「……あの……」

「ん?」

「逆に……その、今は好きくないのか……? 何がきっかけで……?」

「何言ってんだ大好きだぞ!!」

「やめろそういう意味じゃない!!」


 うう。決して、もう一回好きになってくれとかでもなく。


「小二の時にさー。なんかテレビでそういう話題だったのかなぁ。母親に、急に恋愛話を振られてぇ。『雄太くんは好きな子とかいるのー?』って聞かれたから、僕ケンジくんが好きーって言ったわ。そしたらぁ、賢治くんとは結婚できないのよーって言われて」

「……まじですか」

「まじよまじ。そんで、あー、残念だなーと思いました。うん。でもまあ、じゃあずっと友達でいればいいかーみたいな」

「そおなの……」


 その情報をどう処理すればいいんだ、俺は。

 いや、でも、なんつーか……。


「な、なんかそれ……逆に悪いなぁ。あれじゃん、少女漫画で言ったら、ずっと片思いし続けた主人公が、結局何も言わずに終わっていくアレと一緒では……」

「いやま、そんな気にしなくていいよ。小さいときって大体そんなもんじゃね?」

「ええー……でもお前、浮いた話全然無いしなぁ……」


 初めて会った日から現在に至るまで、女っ気無しでとことん恋愛に興味ねえやつだなぁと思っていて。俺は勝手に心配して、好きなやついないの、好みのタイプいないのーと、一時期はだいぶ問いつめた気がする。そのたびに「ぼちぼちかなぁー」と返されていたから、いやほんと興味もてよーとか、冗談のつもりで……言ってたけど…………


「…………」


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