【感想】 『関東やくざ者』(1965年/主演:鶴田浩二) ベタだけど、面白い


監督 小沢茂弘

脚本 小沢茂弘

出演 鶴田浩二、村田英雄、丹波哲郎、大木実、藤純子



 ベタ。本作をひと言で表すなら、この言葉に尽きる。しかし、それを面白く仕上げるあたりは、さすが職人、小沢茂弘。

 米騒動で揺れる大正時代を舞台に仁義を重んじるヤクザと、総会屋の走りみたいなヤクザの対立を描く。


 作品前半は米騒動が題材ということもあり、群衆が暴れ回る大掛かりなシーンが続出。

 ここで主人公が見せる騒動の収め方がなかなか凄い。いきなりダイナマイトを爆発させ、群衆がびっくりしたところで、ド正論をブチかます。驚きのあまり、思考停止に陥った群衆は、なんだかよくわからないまま説得されてしまうのだ。この見事な人心掌握術(?)に主人公がタダ者でないとわかる。


 対する敵役の丹波哲郎は政治家と結託し、汚れ仕事に手を染めるが、その一方で「卑怯なことは嫌い」とのたまう言動の噛み合わない男。亡き父に反発し、年老いた母の言うことは聞く、いつも持ち歩いている日本刀が自信のなさの表れにも見えてくる。

 そんなアンビバレントなキャラクターを丹波が熱演。妙なカリスマ性すら感じさせるのだから、さすがだ。


 クライマックスの殴り込みでは、主人公を乗せたトラックが敵地へ向けて爆走。トラックは勢いそのままに塀を突き破って、アジトへ突入。荷台に鶴田浩二が乗っているのに!

 敵の数が多いのでダイナマイトを投げまくるのもハデで楽しい。まさか、米騒動のシーンが伏線だったとは。


 驚いたのは北島三郎が「兄弟仁義」を歌うシーン。映画『兄弟仁義』は翌年公開だが、その前に劇中曲として使われていたとは。





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