第7話 嘘かまことか

 朝晩が少し冷え冷えとして、布団の誘惑に負けそうな季節になりつつある。少し勢いをつけて起きた。急いで準備をして、学校に向かう。

 紺色のセーラー服を身に纏い、胸元で大きめのリボンが揺れる。



 黄色に染まり切ったイチョウの木から、冷たい風に乗ってひらりと落ちてくる。今は、イチョウ並木の下に銀杏は落ちていない。強い匂いのしない、イチョウ並木に少し寂しさを覚える。




 空を飛ぶ小鳥たちが、上空で歌を唄う。その心地よい朝に、あたしの足取りも軽やかになった。早く学校に行って、話をしたい。昨日寝る直前の、不安なんて払拭されている。



 澄んだ空気を胸に吸い込み、校門をくぐった。教室に向かう廊下で、後ろからすごい衝撃を受けた。

 突然の衝撃で、よろけてしまう。




「おっはよう!」

「お、おはよ……びっくりするから、後ろから攻撃するの辞めてもらえる?」

「だって、昨日の話の続きが気になるんだもん! それで、ヒイロの”大丈夫”ってどう言う意味なの?」



 廊下では、他クラスの友達同士が集団で話をしている。その間を抜けて、教室に入った。もったいぶっている訳ではない。ただ、どう話を始めるべきか少し頭をひねらせる。



「どんな話でも、驚かない?」

「うん、大丈夫!」



 エリカは、どこか楽しげで目を輝かせている。あたしの席に何故かエリカが着席をして、机の前にあたしが立つスタイルで始まった。



「あのね……」




 先日の帰り道に、白蛇びゃくだに出会いその蛇についていくと彼岸花の美しく咲く場所にたどり着いたこと。そして、その白蛇が儚さを帯びた男になって話をしたこと。

 洗いざらい、全てを話した。終始、エリカは”理解できない”といった表情をしつつも最後まで聞いてくれた。

 時折、ふんふんと相槌を打って驚きで丸くした瞳を閉じた。



「それで……ヒイロは、その人が好きだ。と言うわけね」

「え、いや。気になるけど、これは好きではなくですね? ……って聞いてないでしょう!」

「うんうん。聞いてる」



 閉じていた黒の瞳をのぞかせ、あたしをまっすぐに捉える。スッと見られて、言葉を濁らせてしまう。



「好きじゃなくとも、気になるわけね?」

「誰でもこの状況になれば、気になるよ。だって、信じられないよね?」

「白蛇が、人になって話すなんてね」




 あたしは、ゆっくり瞬きをして肯定した。夢か実かわからない出来事だ。体験した本人でさえ、疑いそうになる。




「今日も会う予定なの?」

「また来ます。なんて言ったけど、会えるかわからないし」

「私も付いて行っていい!?」

「いや、ダメでしょう!?」

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