第2話 あなたは誰?

 声のした方を向くと、白い髪に赤の瞳の男性と目が合う。肌まで白くて、色素の薄さが背景と溶け込んでしまいそうだ。


 あたしは、その男に手を伸ばして大きな声で声をかけた。

 


「まって!!」



 ふわりと彷徨う視線が、あたしをしっかりとは捉えない。赤の瞳が揺れて、そのまま視線を逸らして私に背中を向けた。



「神じゃない」



 消え入りそうな小さな声を残して、歩き出してしまった。私は、素早く足を動かして隣に並ぶ。


 ゆっくりと視線を揺らして、何か思案しているようだ。そして着物の袖に腕を入れて、紙を出してゆっくりと開かれた。その開かれた紙には、何やら地図が描かれている。



「ここに行きたいんだ。どう行ったらいい?」



 あたしはその地図を受け取り、じっくりと見ていく。この街の地図で間違いがなさそうだ。あたしは、地図から視線を外して隣の男を見上げる。


 やはり、視線は合わない。ゆらりと揺らめいて小さな炎が消えてしまいそうに見える。



「ここを真っ直ぐ行くと近くに出ます! ……あたしが案内をします。こっちですよ!」



 説明をしている間も、赤の瞳が揺れる。



(アルビノって言うんだよね。視力が悪いと聞いたことがある)



 そう思いつつ、男の着物の裾を軽く引いて道案内をする。視界がクリアじゃないからか、ゆっくりとした歩き方をしている。



 あたしにとっても、足が遅いのでこの方が助かる。




「ここを曲がったら、つきますね!」



 そこに着いたら、お別れかもしれない。と思いながらも、案内をした。


 

 自分から話を振るに振れず、目的地に到着をしてしまった。何も考えてなさそうにも見えるその表情からは、何も読み取れない。あたしの視線に、気がついたのか一瞬こちらを見た。しかしすぐに歩く先に目線を戻して、こくりと頷いかれるだけだった。




「ありがとう。助かった」



 ふわっと風が吹いて、白蛇びゃくだになって割れた赤色の舌をチラリと覗かせた。

 そして、滑らかに体を動かして消えてしまう。




「神様……あれは、神様でしょ!」



 お願いは、聞いてもらえなかった。それでも、その神々しい姿を拝めた。それだけで、少しぐらいいいことが起きそうな気がする。



 自分の家に帰るために、踵を返した。鼻歌なんか歌いながら、軽い足取りで歩く。心なしか、家に着くのも早かった。



 



 

 


 



 

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