第42課題 ウォール・トゥ・クライム08——【火登燈香4】
あんなことがあったのに。
他人を助けるために自分のドローンを……あれ? 眼鏡ボーイのだっけ? ……ちょっとそれはかわいそうかも。ま、いいや。人命最優先だし。とにかく
『右上に右手からのダイアゴナルで5手まで進んで』
1、2、3、4、5。
それなのに
最初のベーションだってちょっぱやだった。
それにも実は理由がある。登る前の作戦会議のとき、
「オブザベーションは、最後までやりきらない」
「は? どゆこと?」
「
「じゃあどうすんの?」
「適当なところで済ませる。そうだな。最初の50メートル。ここまでまずオブザベーションする。そのあとすぐに
「なるなる。じゃあ50メートルのところまで行ったら一旦そこで待てば良いってことね」
「いや、登り続けてもらうよ」
「ん? 無理くない? 51メートルより上はベーションしてないんでしょ?」
「
その話を聞いてもアタシの頭の上にはハテナマークが立ちまくるだけだった。多分この数のハテナは違法建築だと思う。
「順番に説明するよ。まずは50メートルまでオブザベーションをします」
「うん」
「そのあと50メートル地点から
「うん……うん?」
「それから」
「いやいやいやいや! 待って待って。え、その位置からアタシ見えなくない?」
「見えないよ」
「はあ?」
「でも、ホールドの位置とかは全部覚えておくから、指示通りに動いてくれれば大丈夫」
「……はああ!?」
「もちろん、指示通りに動けない場合は戻らないといけないけどね」
「はあ」
「で、話は戻るけれど、50メートルの位置から指示を出しながらドローンを上昇させて、51メートルより上のオブザベーションをおこないます」
ここまで来るとため息も出なかった。どんな脳ミソしてたらそんなことできるわけ?
「えーっと、つまりー、
「そうだね」
当たり前みたいに言う。
「勝つためには、それくらいしないといけない」
「
「うぉおおああやめてえええ!」
そんなことを思い出しているうちに、
『いったいどうやってこんなスピードで……。
『
『どれだけ早いオブザベーションをしても1分は絶対に掛かるはずよ。オブザーバーの実力にも限界はあるはず』
『だからー、
『いったいどんな』
『
『そんなこと、できるの……』
『だから言ったじゃん。
アタシはいとも簡単に追いついて、追い越した。
でも逆に、爆発力みたいなものは感じない。ここで抜いちゃえば、そのまま順位も変わんなそうな気がする。もちろん、
この高さまで来ると横風も強まる。今までできていた技ができなくなるかもしれない。でもそれは
『ごめん、
イヤホン越しの
『飛んだ』
「飛んだって?」
『記憶が飛んだ。僕、今、なにやってるんだっけ……?』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます