第三幕
第35課題 ウォール・トゥ・クライム01——【火登燈香3】
ウォール・トゥ・クライム。
ついにこのときがやって来たんだ。
前は観客として来た場所に、今度は選手として入れるなんて、なんか変な感じがする。ふわふわするって言うかなんて言うか。気分がコーヨーしてるのかも。
あれから練習をたくさんした。けど、パーフェクトってわけじゃあない。
「
控室でそんなことを言った。
「
「うん。
「そうだよ」
「なんかそれって、レベルアップして強くなるみたいだなって思って。アタシも
スローパーやハリボテの苦手を克服しようと頑張った。けど、まだまだできないことの方が多い。その
「無理に金に成る必要はないよ。成ったら行けない場所もある。成らない方が有効なときもあるんだ」
「そうなん?」
「うん。
アタシは駒じゃない。前にケンカ……ってーか一方的にまくしたてたときにそう言った。でもそのときとは違う意味で、今の
腕の長さや足の長さを巻尺で計ってくれた。身長や座高も。まあそれはいいとして、さすがに体重だけは勘弁してほしかった。フツーに聞いて来るからフツーに答えるところだった。
でも、
だからアタシは
結果、お姫様抱っこをしてもらうことになった。
「軽すぎるよ!? え、
「体重に本気とかねーし!」
「じゃあもっと食べないと!」
「ママかよ!」
アタシは身長が高いからこんな風に体を持ってもらうことがなかったし、見た目重そうだから冗談で重いって言われることはあっても、真剣に軽さを心配されたことはなかった。
嬉しかった。
だから素直に喜べなくて強めにツッコんじゃった。でも
生まれて初めて、依存なしに甘えられているって思った。
身長173センチ。股下87センチ。肩幅38センチ。腕の長さ67.5センチ。そして体重の欄には『軽過ぎ! 要注意』。
なんだかよくわからないけど、抱きしめたくなった。
アタシの体の全部を知って、心をわかろうとしてくれてる
「わかった。アタシはアタシとして、アタシができることを精一杯頑張るよ」
二人は絶対強くなってる。
二人して控室を出て、クライミングウォールへ向かった。
元々切符が渡された人しか来られないこの大会は、予選と本線しかない。つまり、しょっぱな準決勝から始まる。
準決勝は75メートルの壁を登る。75メートルなんて未知の体験だった。
でも、始まったと思ったら、あっという間に終わった。今までやってきたことが、無意識にできたってことなんだと思う。それと、
結果アタシは一位で通過できた。これで決勝に進められる。
「30ペアが6ペア1組になってA~E組みに別れて登って、それぞれの一位が決勝に進める。そこに前回王者がシードとして加わって、決勝が始まる」
「だね」
「でもこれ、
「スポーツってだいたいシードあるし、そう言うもんなんじゃないの? アタシはいいアップになったよ」
実際そんなに疲れてない。なにより、
「あ、でも、
「大丈夫。楽しんでいるから」
「じゃ、いいね」
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