第32課題 二人の行方02
僕はピョンピョンジムことホールドストーンを訪れていた。
「お? 一人でなんて珍しいじゃあねえか」
カウンターで受付をしている
「僕もやってみようかなって」
「いいね。あっ、でも親が一緒に居ないとダメなんだ」
「いつも
「あいつがどうしてもって言うからなあ。親の代わりにオレがずーっと付き添ってやってんだよ。まあ、
「ありがとうございます」
「でも同意書にはサインな」
そう言って渡されたのは、一枚の紙。このジムでケガをしても自己責任だと言うものだった。改めてボルダリングが危険を伴うスポーツだと言うことを実感する。
着替えらしい着替えはないから、上着だけロッカールームに入れておく。シューズをレンタルして早速取り掛かる。一番簡単なコースから挑戦してみた。
しかしそもそも運動神経がない僕は、その一番簡単なコースすら難しかった。絶妙に届きづらいホールドとホールドの間隔。わかっていても上手く使えない足。
しかもホールドを持っているときはそのホールドに集中してしまって、次にどんな格好でどこを掴めばいいかなんて想像すらできない。
そうこうしていくうちに握力はなくなっていって落ちてしまう。
二度三度とやっていくうちになんとなく理解は進んでいくのだけれど、逆に体力は削られて行って理解通りに体が動いてくれない。
四度目の挑戦。一番簡単なコースでここまで失敗するのは史上初かもしれないと
僕は彼女のことを
「確かに……駒じゃ、ない」
しかしそれでも、彼女は動いてくれた。僕の導き通りに。
僕もようやくゴールへと辿り着いた。たった3メートルを登り切るのに、何回落ちたことだろう。
「大したもんだ」
へなちょこな僕だけれど、
意志の強そうな大きなツリ目を僕に向けて見上げる女の子がいた。深く澄んだエメラルドグリーンに釘付けになり、僕はなんの言葉も発せない。
彼女が首を傾げると頭頂部の左右で結ばれた銀色のツインテールが、ふぅっわふわと踊った。
彼女は銀色に燃えていた。
艶やかに揺れる銀色を、潤んだエメラルドグリーンを、健康的に焼けた肌を、そのすべてを美しいと思った。
そして僕は落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます